◆JERAセ・リーグ 中日4―9巨人(10日・バンテリンドーム)

 ピンク色のバットを握った坂本の両手には、いつも以上に力がこもっていたのかもしれない。「打てて良かったですね」。

1点リードの8回2死一塁から代打で打席へ。カウント0―2から外角122キロナックルカーブを体の前でさばき、左前へ運んだ。一、二塁とチャンスを広げ、続く吉川が右前へタイムリー。打撃の神様・川上哲治を超えて球団歴代単独1位の通算1664単打目が、貴重な追加点の呼び水となった。

 特別な日に再び、打撃の神様の領域に足を踏み入れた。プロ20度目の母の日。川上哲治に並ぶ通算2351安打目を放ったのはくしくも、24年5月12日の「母の日」ヤクルト戦(神宮)だった。09年は逆転2ラン、19年にセ・リーグ記録を更新する開幕から36試合連続出塁を達成と、母の日に数々の足跡を残してきた。

 1年目の07年に逝去した母・輝美さん(享年47)への感謝を忘れたことはない。今年の4月は宮沢りえが演じる余命宣告を受けた母が娘を育てるストーリーの映画「湯を沸かすほどの熱い愛」を観賞。16年に報知映画賞の4部門を受賞した名作に心を動かされた。

 勝負どころに備える姿はいつだって変わらない。

7回の代打から三塁に入った2日の阪神戦(甲子園)から6試合未出場。今季最長のブランクとなったが、フリー打撃では90センチ超の長尺バットやバスターを試しながら感覚を微調整。「(試合勘は)全然、問題なく大丈夫です」と巡ってきた出番できっちり仕事を果たした。

 試合後に自身のインスタグラムを更新し、ピンクのバットを握った写真とともに「母の日 ナイスゲーム」とつづった背番号6。代走が出て、ベンチに戻る坂本を満面の笑みで迎えるナインの姿が、欠かせない存在たるゆえんだ。(内田 拓希)

編集部おすすめ