次代を担う逸材たち~アマチュア野球最前線 
第8回 神村学園・龍頭汰樹

 最速150キロ近い速球を投げる剛腕たちが注目を集めた今春の選抜大会において、神村学園のエース・龍頭汰樹(りゅうとう・たいき)は、まるで異なるタイプのピッチャーとして異彩を放っていた。

【高校野球】130キロ台のストレートで強豪を翻弄 指揮官も絶...の画像はこちら >>

【選抜で優勝候補の横浜を完封】

 ストレートは130キロ台半ば。それでも選抜では優勝候補の横浜打線を封じ、準優勝の智辯学園打線を苦しめた。

力でねじ伏せるのではなく、狙いを外し、配球で打ち取る。まるで百戦錬磨の技巧派投手のようなマウンドさばきだった。

 そんな龍頭について、小田大介監督は言う。

「内野手として見ると、打撃はやや物足りず、脚力もまだまだでした。だから、ピッチャーのほうが向いているかもしれないと思っていたんです。本人も『投手をやりたい』と言っていたので、1年秋からピッチャーにしました。選手本人の意思を尊重するのも、指導者の大事な役目ですからね。ただその時点では、ここまで成長するとは思っていませんでした。想像以上の成長? 横浜と智辯学園を相手に、あれだけの投球を見せたんですから、想像以上ですよね」

 龍頭をリードする2年生キャッチャーの川本羚豪(れいごう)は言う。

「横浜や智辯学園にはスター選手が並んでいます。そんな相手に対しても、強気で投げさせてあげるのがキャッチャーの役目です。実際に対戦してみると、打者の雰囲気や存在感の大きさを感じましたし、『相手に飲み込まれてはいけない』と思っていました。

ただ、智辯学園戦は、終盤に少し弱気になってしまい、それが失点につながってしまいました」

 それでも2試合で許した失点は2。横浜戦は12個、智辯学園戦は17個のフライアウトを奪った。川本はフライを打たせる配球をしたと語る。

「低めにボールを集めて打者の目線を下げたうえで、高めを使うとフライを打たせやすくなります。相手は積極的に手を出してくると聞いていたので、高めを有効に使う配球を意識しました。もちろん、甘く入れば危険なのでリスクもあります。ただ、龍頭さんはコントロールがよく、ストライクゾーンの四隅へしっかり投げきれるところが強みです」

 ただ智辯学園との試合は8回に追いつかれ、タイブレークとなった延長10回に失点して敗れた。川本が振り返る。

「横浜戦ではフォークがよかったのですが、智辯との試合ではその球を捉えられてしまいました。終盤までは龍頭さんの持ち味をしっかり引き出せていたと思いますが、最後は少し投げ急いでしまい、ストライクゾーンに入った変化球を打たれてしまった。そこが一番の反省点です。少しでも甘く入った球は見逃してくれませんでした。

だからこそ、高めのスライダーやインコースのストレートをもっとうまく使わないと」

【タイミングを外して打ち取るのが一番】

 170センチ67キロと投手としては小柄な龍頭だが、気迫あふれる投球を持ち味としている。

「どんなに苦しい場面でも、龍頭さんは攻めの投球をしてくれる。だからこそ、龍頭さんを乗せるためにも強気のリードをしないといけない。スリーボールになっても、フォアボールを出す心配がほとんどありませんし、ストレートだけでなく、スライダーやフォークでもしっかりストライクが取れる。だから、140キロに届かないくらいのストレートをより速く見せながら、打者に的を絞らせない配球を心がけています」(川本)

 横浜、智辯学園相手に好投した龍頭は、こう語っていた。

「もともとはストレートと横に逃げる変化球しかなかったので、落ちる球を覚えれば横の変化もさらに生きると思い、冬にフォークを重点的に磨いてきました。これからは、勝負球をもっと低めに集められるようにしたいですね。そのためにも、インコースへしっかり投げきることが大事だと思っています」

 三振、ゴロ、フライなど、バッターの打ち取り方はいろいろあるが、龍頭は次のように語る。

「自分としては、相手のタイミングを外して打ち取るのが一番いい。守ってくれる仲間がいて試合で投げられているので、彼らのためにと思っています」

 高校卒業後は大学に進み、そこで力をつけてプロを目指すという。

「いずれはプロで勝負したいと考えています。そのためにはストレートの質、球速を上げないといけないですし、変化球の精度もまだまだ......。課題だらけだなと思っています」

【相手のスイングから狙い球を察知】

 それにしても、なぜ140キロに満たない速球で全国屈指の強豪を抑えられたのか。

小田監督は言う。

「簡単に言えば、バッターが狙っていないボールを投げれば打たれない。バッターのスイングからどんなボールを狙っているのかを判断して、違う球を投げればいいわけです。そのうえで、球速の強弱をつけたり、高低に投げ分けたりして、タイミングを外す。龍頭はそれができるピッチャーですから。あとは守備陣がしっかり守ってくれれば、ある程度計算できます」

 コントロールのいい龍頭だからできる芸当だろう。

「高校生のなかでは、かなり精度の高いピッチャーだと思います。智辯学園との試合でも、意図的にフライを打たせる配球をしていました。あえて高めを使い、相手が高めを意識し始めたところで今度は低めへ集める。龍頭はそういう組み立てができる。ほかのピッチャーでは、なかなか難しいと思います。ストレートでも変化球でもしっかりストライクが取れますし、どの球種でも勝負できる。

それが彼の大きな強みです」

 あと2カ月足らずで、夏の甲子園出場をかけた戦いが始まる。龍頭の成長した姿を見たい。

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