歯医者のBGMはなぜクラシックなのか
歯医者さんの看板に「動物」が描かれたものが多いのも、患者の恐怖心を取り除く工夫のひとつなのか。
「痛かったら手を挙げて」の意味に続き、歯医者の疑問パート2。歯医者さんではなぜクラシックやヒーリングミュージックをBGMにするのか。


クラシックにはリラックスさせる効果もあるだろうが、静かな音楽のなかだと、歯を削る音が逆に際立つ気がしてならない。いつからか、クラシックを耳にするだけで、反射的に歯が痛くなる……そんな奇妙な“パブロフ”状態にすらなりつつある。
ロックとか、いっそのことヘビメタなんかのほうが、削る機械音にマッチしたりするのではないだろうか。

というわけで、日本歯科医師会・田口先生に聞いてみた。
「たしかにクラシックや映画のサントラなど、静かな音楽は多いですね。やっぱりジャズとかロックとか、賑やかな音楽はそぐわないでしょう? それに、クラシックといっても、ベートーベンとかではなく、モーツアルトやピアノ曲が多いと思いますよ」

歯医者さんのBGMはやはり、緊張している患者さんから恐怖感をとり、リラックスや安らぎを与えるのが目的だとか。それはそうだろうけど、歯を削る音を音楽で消す「ロック歯科」なんかは、どうでしょう?と提案すると……。
「削る音を消すとなると、相当大きな音になりますよね? あまり音が大きいと、患者さんと会話できなくなります。患者さんの声・反応を聞くのも大切ですから」

昔は、自分でBGMのテープを作る音楽に凝っている歯医者さんもいたそうだが、いまはCD派のほか、ほとんどが有線の音楽という。
「有線は百数十チャンネルあるから、そのなかから『ムードスクリーン』とか『ヒーリングオアシス』『やさしいクラシック』などを選ぶ人が多いみたいですよ」

ちなみに、最近では治療台などがセットになった「歯科用ユニット」に骨伝導スピーカを内蔵し、ドリルの音を緩和したり、音楽を流したりする装置も登場。
さらに、音の他に、歯医者で気になる要素「消毒薬のニオイ」も、アロマテラピーで消す工夫をしている歯科も出てきているという。
どこまでも患者のリラックスを追求する歯医者さん、大変なお仕事です。

(田幸和歌子)
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