カリフラワーは、もっと売れていた。

昔は旬の晩秋から冬になれば、同じく旬のブロッコリーほどの量が、スーパーに並んでいた気がする。
時代によってはカリフラワーの方が多かったかもしれない。だけど今、スーパーではブロッコリーのスペースの方が広い。

同じキャベツの突然変異で生まれた姉妹的な野菜に、どうして差がついちゃったんだろう。農畜産業振興機構に話を伺った。
「1982年に日本食品標準成分表というものが改訂されまして、緑黄色野菜のブロッコリーの栄養価が、カリフラワーよりも高く評価されたのが大きいですね。当時は国民の栄養意識が高まったころでしたし。またブロッコリーはアメリカなどから輸入され、一年中出回ったこともあって、消費量が一気に伸びました」

この姉妹は、多くの西洋野菜と一緒に、明治の初めごろ来日。ところが和の食卓に西洋野菜は普及せず、広く世間に知られたのは第二次世界大戦後、日本人の食が洋風化したころ。先に注目を浴びた白いカリフラワーは、1970年代までブロッコリーよりも遥かに高い人気を博していた。

ところが1980年代に入って、先ほどの話の通り状況は一変。農林水産省の調査によると、2008年産のカリフラワーの国内作付面積や出荷量などは、ブロッコリーの約10分の1。輸入量は、なんと約1000分の1になっている。


「ブロッコリーに非常に押されとる状態は否めんと思うんですね。栄養面ではブロッコリーの方に分がありますんでね。それにお弁当関係、あの鮮やかな緑の色というのは、白の野菜と違って映えますし。あとは価格ですよね、今のこの景気もありますし……カリフラワーは不利かなと」

そう話すのは、都道府県別で日本一のカリフラワー収穫量を誇る徳島県の、JA徳島市川内支所・カリフラワー部会の方。

「ブロッコリーの方が、栽培が非常にラクですしね。カリフラワーって、美白でないと高値がつきませんから、日光に当たって黄色く日焼けするのを防がないとダメなんです。そのため、ここで作られるカリフラワーはすべて、花蕾(からい=モコモコした食べる部分)の上から、キャベツの葉のような部分を内側に2~3枚折って、光が当たらないようフタをするんですね。ところが、これをやることで花蕾が外から見えなくなるので、収穫のころには毎日、全部のフタをめくって、まだならまたフタをして……という作業が必要になるんです。この手間が、カリフラワー産地が減退した一番の原因と言われとるんです」

手間はコストにつながり、売る値段に反映され、値段は人気に影響を及ぼす。そうして全国のカリフラワー農家は、次々とブロッコリーに切り替えていった。ちなみに川内町が、それでもカリフラワーを育てている理由って何なんだろう?
「ここでは昭和26年ぐらいから作られ始めて、昭和40年ごろにはもう非常に大きな産地だったんです。品質についても非常に厳しくするので評価していただけて、仲買さんやバイヤーさんからは、川内でないといかんっていう注文があって。
で、ずっとやめるにやめれんっていうか(笑)。言うてもそういうとこが一番かなと思うんですよね。誇り、プライドがありますしね」

手間のかからない野菜に切り替えればいいのかもしれない。手間や生産者の思いが味に反映されるという、科学的な根拠もない。
ただ、食べ物の美味しさって味覚だけじゃ決まらない。

「今日収穫するか関係なしに、雨が降ろうがね、雪が降ろうがね、関係なく毎日ひとつずつフタを開け閉めするのがね、農家としては大変ですよね」

カリフラワーも、もっと売れていい。
(イチカワ)
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