ええ、わたし、昼ドラがわりと好きでよく見てますの。たとえば、この8月まで放送されていた「ぼくの夏休み」。これがまたタイトルのほのぼのとしたイメージに反して(ちなみにゲームの「ぼくのなつやすみ」とはまったく関係ありません)、現代の小学生の兄妹が戦時中にタイムスリップしてしまい、そこでスパイに疑われたりさんざんな目にあうという、子供が見たらトラウマ必至の内容でした。一度は現代に戻る機会があったものの、空襲の混乱で戻れなかったうえに兄妹は生き別れになってしまいます。そして戦後、7年の月日を経て再会した2人は、互いが肉親ということを知らず恋に落ちるというこれまたやばい展開に……。
ちなみにこのドラマでは毎回オープニングで、ドラマには登場しないはずの宇津井健と由紀さおりのツーショット写真が出てくるので不思議に思っていたのですが、最終回になってその正体が判明。何と、この宇津井と由紀こそ、けっきょく元の時代に戻れないまま老人となった兄妹だったのです。……って、何だその、『猿の惑星』DVDのパッケージばりの壮大なネタバレは!
そんな前作とは打って変わって、「赤い糸の女」は現代の女子大生が主人公。主演は三倉茉奈。ご存知、NHKの連続テレビ小説「ふたりっ子」(1996~97年)の子役としてブレイクした双子姉妹「マナカナ」の姉です。
ミスワカナの役で佳奈がそれまでの清純派イメージから脱却をはかったように、茉菜もまた、今回の「赤い糸の女」でイメージチェンジをもくろんでいることはあきらかでしょう。何しろ、脚本が中島丈博です。これまでTHKドラマでは「真珠夫人」、「牡丹と薔薇」、「さくら心中」などを手がけ、男女のドロドロを描くことに定評のある中島の新作だけに今回はどんなものを見せてくれるのか、昼ドラファンとしては放送開始前から期待をふくらませていました(それにしても昼ドラで次々と問題作を送り出す一方で、NHK大河ドラマでも史上最多の4作を手がけている中島先生はモンスターというしかありません)。
先週放映の第1週(9月3日~7日)では、茉菜演じる志村唯美(ゆみ)と親友の貴道麻衣子(上野なつひ)が共同生活を送る大学寮の一室に、新たに鹿野芹亜(奥村佳恵)という謎の美女が加わることでさっそく波風が立ち始めます。大学までオートバイで通う芹亜のことを以前から「暴走族」と(その呼び方もどうかと思いますが)敬遠していた唯美たちは、突然の彼女の入居に戸惑うばかり。しかも唯美はどうも彼女と初めて会った気がしません。
芹亜は大学に通うかたわら風俗店で「唯美」という源氏名でバイトをしています(もちろん当の唯美はそんなことは知りません)。その常連客で徳須麟平(瀬川亮)という若い銀行員とはたびたび濃密なセックスを繰り返していました。じつはこの麟平、麻衣子のいいなずけで、近いうちに長野の資産家令嬢である彼女の実家に婿入りする予定というから話は複雑です。
そのうちに唯美は芹亜が中学時代の同級生であることを突きとめます。
この事実を、唯美は整形外科医である父親(石田純一)――何と、父は芹亜の手術を執刀した張本人だった――から聞き出して知ることになります(てか親父、こんなにあっさり患者の情報をばらすなよ!)。唯美に秘密を知られて芹亜は誰にも言いふらさないようきつく口止めするのですが、そもそもなぜ、秘密がばれるかもしれないというリスクを冒してまで彼女が昔の同級生に近づいたのか、謎はかえって深まるばかり。
週の半ばすぎには、麻衣子の実家近くに住む女性が、唯美と幼い頃に生き別れた実母かもしれないという話を聞かされたり、麟平が麻衣子のいいなずけであることに芹亜が気づいてしまったりと次の展開に向けて動き出します。そのなかで、唯美が麟平にひそかな想いを抱いていること(司法試験に向け受験勉強中の冴えない彼氏がいるにもかかわらず)を察した芹亜は、来店した彼にある話を持ちかけます。これが、麟平に唯美を抱いてくれないかというとんでもない依頼。ええ~~っ!? という視聴者の戸惑いをよそにドラマは翌週へと続きます。
と、のっけからドロドロの展開ながら、唐突にバルザックの小説『谷間の百合』が思わせぶりに登場したりするので油断なりません。舞台は現代にもかかわらず、女子大生たちが無駄に明るい性格を「トイレの100ワット」とたとえてみせたり、「欲望ギンギン」だの「たまげた」だのと口走ったりと、あちこちに登場する独特の言い回しも要注意です。
俳優陣を見ても、ミステリアスな雰囲気漂う芹亜を奥村佳恵(かえ)が好演しているほか、脇を固める麻衣子の実家の母と姉(演じるのはそれぞれ毬谷友子と、「牡丹と薔薇」でS女優として開眼した小沢真珠)が、入り婿に対し今後どんな鬼姑、小姑ぶりを見せてくれるのかといまからワクワクしてしまいます。
ドラマはまだ始まったばかり。気になる方はひとまず、このあと13時半からの第6回をぜひごらんください!(近藤正高)