「今日はいい日だった。ハリウッドザコシショウがR−1決勝。事件だよ」
R−1ぐらんぷりでハリウッドザコシショウが優勝しても感動するのは間違っている
イラスト/小西りえこ

うるう年の2月29日。本人がYOUTUBEにあげた動画の
中で、感慨深い様子で繰り返している。

ハリウッドザコシショウ。通称ザコシが、ピン芸人日本一を決める「R−1ぐらんぷり2016」決勝に進出した。

個人的な流行語大賞は五年連続で『ハンマーカンマー』(有吉弘行)


本人の言葉を真に受けると、ザコシには2兆個のモノマネがある。2兆1個はない。ちょうど2兆個。その膨大なレパートリーの中からネタを選んでいる。

テレビでも何度か披露した有名なモノマネは、
アフロのヅラをかぶって、
「ベレンベレンボンボロン・アンベレンボンベン・ハンマーカンマー」。
そう、古畑任三郎です。
他にも多彩なアニメキャラや、ドラマの主人公、実在の人物のモノマネがある。残念ながら、やや脚色が強すぎるためテレビで観ることは難しい。

最近ではモノマネの他に、ズボンを上げてはくことにこだわっている。
最近の若者がズボンを腰ではいているのに対抗して、ズボンを胸のあたりまで上げてはく。そういうネタだ。

どういう意味? と思ってはいけない。
ザコシのネタに、疑問や思想を持ち込んではいけない。
何か考えさせられるとか、アートっぽい要素があるとか、そんなものは全くない!

こんな風に生きてみたい(東野幸治)


ブレイク直前の芸人を何組も発掘した「あらびき団」では、ダンボールで作ったガンダムの格好で漫談を始めた。
「漫談といえばスーツ姿だけど、間違えてモビルスーツを着てきた」
というギャグのためだけに。一から作ったのだ。ダンボールでガンダム。

最近では「ドラクエの敵ものまね」がツイッターで話題になっている。
最初はドラクエの敵っぽいポーズをしているだけだったが、反響の大きさからかだんだん本格的になり、やっぱりダンボールで小道具を作ったりしはじめた。


この写真のためだけにここまでやるなんてすごい!と思うのは失礼にあたる。
ただただ馬鹿だなあ!と驚いたり笑ったりすればいい。

YOUTUBEにあげている動画は、もっと無意味だ。
自分のハゲ頭をペットボトルでポコポコ叩くだけの動画。
ギャグをゆっくりやってから二倍速にして戻した動画。
芸能人のメイク術を教えると前置きしておいてから、顔を真っ黒に塗って「ボビー・オロゴンです」。
理屈もなにもなく「おもしろい顔」。

たとえるなら、小学校低学年の男子の昼休み。
変な顔をして友達が腹をかかえて笑っている。
あの空間をそのまま持ってきたような、超無意味芸。

これが受け入れられるのか、ゴールデンの時間帯に披露できるようなネタを隠し持っているのかわからない。
ただ、R−1ぐらんぷりは、優勝を逃しても強烈なインパクトを残して、
「あの人が気になる」
と、思わせた芸人が売れる傾向にある。

一気にブレイクする可能性はあると思う。ザコシショウ。

もしも優勝したら、本人のブログに
「夢を諦めず努力すれば、実現するんだなって感動しました」
というコメントを送って…はいけない。
笑わせたい芸人と、笑いが好きな客がいる。
それ以外の関係性は一切ない!
感動的なメッセージなんて1ミリもこめられてない、ザコシの勝負ネタを見届けよう。

R−1ぐらんぷり決勝は、3月6日夜7時からオンエア。
(南光裕)
イラスト/小西りえこ