中国では今、AI(人工知能)時代における新たな起業の形として「一人会社(One Person Company、以下OPC)」が台頭しており、多くの起業家を引き付けています。数年前までは少人数のチームで巨大な市場を動かすことは困難でしたが、現在、それは現実のものとなりつつあります。

OPCとは、主に個人がAIのサポートを受けながら、製品の設計・開発から市場投入に至るまでのビジネスサイクルを単独で完結させる企業形態を指します。中関村人材協会が発表した『中国OPC発展トレンド報告(2025-2030年)』によると、2025年6月末時点で中国の「1人で設立された有限責任会社」は1600万社を突破しました。2025年上半期に新規登録されたOPCは前年同期比47%増の286万社に達し、新規登録企業全体の23.8%を占めています。さらに2026年初頭には、「OpenClaw」などの自律型AIエージェントの爆発的な普及に伴い、OPCに対する注目が一段と高まりました。

現在、中国のOPCは主に電子商取引(EC)、科学研究・技術サービス、卸売・小売業、教育・エンターテインメントなどの分野に集中しています。通常、1人のコアメンバーが主導し、AIエージェントや少数のサポートスタッフ、外部委託を活用して事業を展開します。小規模な体制を維持する企業がある一方で、数十人規模へ成長したり、数千万元規模の収益を上げたりする事例も存在します。中国の専門家は、OPCの意義について「若者がより低コストで起業の夢を実現できる点にある」と指摘しています。またマクロ経済の視点からは、多様性とイノベーションの活力に満ちた中小零細企業による「ロングテール経済」を促進する効果も期待されています。

AI時代に広がる「一人会社」、中国で加速する新しい起業のかたち

一方で、OPCには従来の企業とは異なる新たな課題も浮上しています。例えば、人件費を削減できる半面、AIや大規模モデルのAPI呼び出しコストが高額になるケースが少なくありません。資金調達の面でも、個人の信用力が障壁となります。

現在、OPCの発展に適した国際的な評価・信用体系が未整備であり、コンプライアンスや市場での提携において障害となっています。最近では、年商4億ドルを誇る遠隔医療分野のOPC「Medvi」が、虚偽および誤解を招く表現を用いたとして米食品医薬品局(FDA)から警告を受け、物議を醸す事例も発生しました。

こうした中、中国ではOPCの健全な発展を促す政策が加速しています。今年3月、広東省発展改革委員会は『広東省におけるAI・OPCイノベーション発展支援行動計画(2026~2028年)』を発表しました。これは中国初の省レベルでのOPC特化型支援策です。広東省は「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」の地理的優位性とデジタル経済の基盤を活かし、産業育成、エコシステム構築、人材支援などを通じて、OPCの発展に適した環境の整備を目指しています。

依然として課題は残されているものの、中国の業界関係者の多くはOPCの長期的な展望について楽観的な見方を示しています。OPCは一過性の現象ではなく、長期的なビジネスモデルとして定着し、今後も多くの起業家が持続的に参入する分野になることが予想されています。(提供/CGTN Japanese)

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