今中慎二インタビュー 後編

(前編:今中慎二が気になるルーキーの投手は? 巨人の竹丸和幸が勝てる理由も分析した>>)

 投手が多彩な変化球を操る時代でも、ピッチングの柱となるのはやはり「真っすぐ」。かつて中日のエースとして活躍した今中慎二氏に、現役時代の体験や現役投手の例も挙げてもらいながら、真っすぐの重要性を語ってもらった。

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【真っすぐに求めるべきは「空振り率」】

――前編の記事でも話をされていましたが、今中さんは真っすぐで空振りを取れるかどうかを重視されています。

今中慎二(以下:今中) 解説者として各チームの選手やコーチ、監督とも話をする機会がありますが、共通している意見は「球速が160キロ近く出ようが、空振りを取れない真っすぐには怖さがない」ということです。つまり、投手が求めなければいけないのは、球速ではなく空振り率です。球は速いけど空振りが取れない投手の特長は明らか。「エイヤ」という感じで投げていて、球離れが早いんですよ。

――ご自身も現役時代には、真っすぐで空振りを取ることを意識していたんですか?

今中 自分のバロメーターでしたね。特にオープン戦などでは、常にそれを意識して投げていました。真っすぐで空振りが取れたら「いけるな」というイメージです。バットに当てられると、打球はどこかに飛ぶということですから、そうすると何かが起こる可能性が出てくる。空振りであれば何も起こりませんし、大した変化球がなくてもピッチングが成立するんです。

 今の投手の球種を見ると、フォーシーム(真っすぐ)は25%くらいで、スライダーやツーシーム、カットボールなどが30%といった割合が多いですが、「フォーシームが25%ってのはどうなの?」と。バッターを抑えるために、一番大事な部分だと思いますけどね。

――空振りを取れる真っすぐを投げる秘訣は?

今中 いろいろあると思いますが、一番わかりやすいのは球持ちを長くすること。

ただ、球持ちを長くして150キロ以上の真っすぐを投げるのって、非常に難しいんです。それをできる投手は少ないです。

【球持ちが長い現役の投手は?】

――それができている現役の投手を挙げるとすれば?

今中 阪神の髙橋遥人は球持ちが長いですね。今季、ヤクルトの山野太一が5勝1敗(5月13日時点。以下同)と勝ち星を積み重ねているのも、それが大きな要因だと思います。ボールが150キロを超えて球持ちが長いと、間ができてバッターはタイミングを取りづらくなります。バットを「1、2、3」のタイミングで振っても合わないんです。

 髙橋の変化球はツーシームとスライダーくらいで、球種はそれほど多くないですが、バッターはほとんどタイミングが合いませんよね。かなり真っすぐが効いていると思います。ここまでの成績は、わずか2失点で4勝。今のピッチングが続けば、とんでもない記録を作りそうですが......そこまで体が強い選手ではないので。阪神は登板間隔を空けながら投げさせていますね。

――同じサウスポーの中日の金丸夢斗投手はどう見ていますか? すでに、ルーキーイヤーだった昨年を上回る3勝(3敗)を挙げています。

今中 髙橋と比べるとまだまだです。真っすぐはそこそこいいのですが、変化球が頼りないというか、生きていないんです。それと、ピンチに弱くて、もうひと踏ん張りができません。やはり真っすぐで空振りがもう少し取れるようになれば、ピッチングが安定してくると思います。

――真っすぐといえば、今季からヤクルトに加入したホセ・キハダ投手は、真っすぐの割合が89.2%とかなり高いです。

今中 ロサンゼルス・エンゼルスにいた時から、勢いだけで投げているような感じですよね。真っすぐが通用する時と、しない時の差がすごく激しいピッチャーと見ています。現在は防御率0.00で12セーブと、いいほうに転んでいますが、打たれ出したらお手上げ状態になるんじゃないかと。

 ただ、日本のバッターは速いボールをあまり打てませんし、このままシーズン最後まで押しきることも考えられます。今は真っすぐがくるとわかっていても、バットに当たらない、ボールが飛ばない、という感じ。とにかく今後に注目ですね。

 真っすぐは一番打ち損じをしやすいボールです。

岡田彰布さんや原辰徳さんと話した際にも「真っすぐの打ち損じは多く、変化球の打ち損じは少ない」と言っていましたし、あらためて、投手は真っすぐを磨くべきだと感じています。

【現役時代の今中氏は「テンポ」も強く意識】

――ほかに、真っすぐに魅力のある投手を挙げるとすれば?

今中 西武の平良海馬も真っすぐが強いです。リリーフに回ったかと思えば、また先発に戻ったりといろいろな役割をこなしていますが、常に結果は出しています。ただ、リリーフで1イニングを全力で投げる160キロの真っすぐと、先発で投げる力をセーブした真っすぐは当然違いますけどね。

――平良投手は、ピッチングのテンポが速いのも特長ですね。

今中 それでいて球種も多彩ですから、バッターは打ちにくいでしょうね。自分の場合は球種が少なかったという理由で、テンポよく投げることを意識していました。バッターに考えさせるのが嫌だったんです。上原浩治(元巨人)も球種が少なかったからか、投げるテンポは速かったですね。

――今中さんは、アマチュア時代からテンポよく投げることを意識していましたか?

今中 高校時代(大産大高大東校舎/現・大阪桐蔭高)に、山本泰監督から「テンポよく投げろ」とずっと言われていました。夏の強化練習で、40分以内に240球投げたこともありました。捕ってはすぐに投げ、捕ってはすぐに投げを繰り返し、変なボールがいったらめちゃめちゃ怒られました(笑)。

 プロ入り前からそういうテンポが染みついていたので、逆にゆっくり投げることができませんでした。リズムが出なかったんです。意図的に「ちょっと間を取ろうかな」という場面はあったのですが、ランナーがいない場面でゆっくり投げることはなかったです。

――球種を増やそうという考えには至らなかったですか?

今中 自分なりには増やしていましたが、周りには言っていませんでした。基本的には真っすぐとカーブ、それとフォーク。そもそも自分たちの時代は変化球の種類が少なかったですし、真っすぐの比率が70%くらいなのが普通でしたから。ただ、真っすぐで空振りが取れるかどうかは、昔も今もピッチングの生命線であることに変わりはないと思います。

【プロフィール】

◆今中慎二(いまなか・しんじ)

1971年3月6日大阪府生まれ。左投左打。1988年のドラフト1位で、大産大高大東校舎(現・大阪桐蔭高 )から中日ドラゴンズに入団。2年目から二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多勝(17勝)、最多奪三振賞(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを独占した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。

2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。

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