【大学駅伝】関東インカレで見えた有力校の現在地(前編) 箱根...の画像はこちら >>
 新チームの実力はどうなのか? 夏の走り込み、秋の駅伝シーズンに向けての"中間指標"ともいえる関東インカレ(5月21~24日、ハーフマラソンは4月5日開催)が終了した。春のトラックシーズンの結果は箱根駅伝に直結するものではない。
しかし、有力校の戦いぶりには、確かな現在地と課題が浮かび上がる――。全2回のうち前編では、好結果を出した早稲田大、中央大、順天堂大の3チームをピックアップする。

【早大は"攻めのレース"を実践】

 早稲田大の充実度が群を抜いている。

 4月開催の1部ハーフマラソンでは主将の小平敦之(4年)が4位、瀬間元輔(3年)が10位、堀野正太(2年)が14位。そして初日の1部10000mでは、4月の日本インカレ10000mで優勝した山口竣平(3年)が前を引っ張る積極性を見せたが、ラストでついていけずに6位に終わり、両手でトラックを叩いて悔しがった。翌日の1部1500mではルーキーの本田桜二郎が400m過ぎから大逃げを打ち、ラストの直線で差されて2位に終わったものの、山口同様に果敢なレースを見せた。

「(ラストで)後ろにつかれた時は『離れてくれ』と思っていました。本当にキツくて、いっぱいいっぱいでした。中盤で離さないといけないところで離しきれず、結局、自分の弱さを突かれてしまった。負けるとしたらラストだったので、そのラストで抜かれてしまったのが一番悔しかったです」

 本田もレース後に、その悔しさをぶつけるように右手を何度もトラックに叩きつけた。感情をむき出しにするのは勝てる自信と勝利への意欲が強いからこそで、チームメイトは山口や本田の姿に奮い立ったはずだ。

 最終日はまず1部3000m障害で佐々木哲(2年)が圧倒的な強さを見せ、大会新記録(8分24秒96)で優勝。同じく1部5000mでは鈴木琉胤(2年)が13分33秒73という好タイムで2位、工藤慎作(4年)が5位、吉倉ナヤブ直希(3年)が9位と結果を残した。

 レース後、鈴木は柔和な表情で振り返った。

「70点ぐらいです。いつもだったら(ずっと)前を引いて、(後ろの選手に)ラストで前に出られて負けてしまう形が多かったんですけど、今回は留学生に混ざり、負けないように位置取りをしっかりとするレースができた。レース展開としては満点かなと思うんですけど、やっぱりラストが課題なので、それがマイナス30点です」

 鈴木は昨季、箱根に向けてトラックからロードにシフトするなかで「トラックを走った筋肉の記憶を忘れてしまった」という。だが迎えた今季は、4月の金栗記念選抜の5000mでいきなり自己ベストを更新(13分20秒64)するなど、スタミナとスピードがうまく融合した走りに手応えを感じている。

 花田勝彦監督は、内容が伴う結果を出した選手たちを高く評価した。

「勝ったのは佐々木だけですけど、みんな前半から積極的なレースができたのはよかったと思います。工藤にしても、山口にしても、ふだんの練習から質がどんどん上がってきていますし、私が指導してきたなかでは、実業団と比べても一番レベルが高いチームになっています。

 ただ、(箱根駅伝に向けては)主力7、8人に加え、残り2、3枠を埋める中間層がここから調子を上げていかないといけないので、6月から箱根を意識した練習に取り組んでいきたいです。いつ走っても(10000m)27分台、(5000m)13分10秒台でいける選手が片手(5人)以上になれば、箱根(優勝)も見えてくると思います。簡単ではないですが、チームのノウハウを生かし、1年生をはじめ強化していきたいと思います」

 花田監督が語ったように、今季の早大の充実ぶりは、結果もさることながら、そのレース内容に表れている。序盤から先頭に立ち、流れをつくったうえで順位を取る。

目先の勝ち負けだけではなく、"その先"を見据えたレースを実践しており、個の強さを追求する早大らしい強化が順調に進んでいることがうかがえた。

 本田と並ぶスーパールーキートリオの増子陽太と新妻遼己はU20アジア選手権(5月28~31日・香港)出場のため、今回はエントリーしなかった。ただ、それにしても前回の箱根組が好調で、ルーキーも勢いがある。例年、選手層の薄さを指摘される早大だが、今季はその課題を着実に克服しつつある。

「早稲田、強し」

 まだ5月ながら、箱根に向けて他大学の警戒感は増している。

【中大はスピードに加えて強さを意識】

 中央大も強さを見せた。

 1部ハーフで佐藤大介(3年)が日本人トップの2位と快走し、田中伶央(3年)が12位。1部10000mでは三宅悠斗(2年)が28分22秒27で5位、1部1500mでは寺田向希(3年)が4位、佐藤蓮(4年)が6位でダブル入賞。1部5000mでは岡田開成(3年)が切れ味抜群のラストスパートで留学生もおさえて優勝し、佐藤大介(3年)も7位に入った。1部3000m障害では、初めて関東インカレの舞台に立った主務の山﨑草太(4年)がサプライズの3位入賞を果たした。

 岡田が汗をぬぐいながらレースを振り返った。

「1着を取ることを目標にしていたのでよかったです。城西大の柴田侑さん(4年)をかなり意識していたので、柴田さんがいたらもっと手前で仕掛けようと思っていたんですけど、(後ろを)見た時にいなかったので、ラスト400mから仕掛けました。

ラストスパートは結構ドキドキしましたけど、後ろがいないのを見て安心しました」

 留学生相手にも物怖じせずに戦えたのは、箱根後に行なったアメリカ合宿の影響が大きいという。

「僕は5000mのタイム(自己ベスト)が 13分19秒なんですけど、練習をしたアメリカのチームでは最下位で......。これが世界なんだと意識が変わりました。今回も、留学生相手でも勝ちきらないと世界では戦っていけないという意識で走ることができました。

 ラストスパートは、箱根が終わってからスピードが出しやすいフォームに切り替えたのと、去年の夏からラストの強化を意識していて、(10月の)出雲駅伝あたりから少しずつ身についてきたのですが、それがようやく完成したという感じです」

 いずれにしても勝つのは大事なこと。その経験が選手をどんどん上のレベルに押し上げていくのだが、「(昨季のエース)溜池さん(一太/現SGホールディングス)の代わりは自分しかいない」という自負もあり、今季の岡田は主軸として相当活躍するだろう。

 藤原正和監督は「みんな、ウチらしい成長進化を見せてくれた」と表情を緩める。

「ここまで全体としてはうまくビルドアップできていると思います。ウチは速さだけではなく強さを意識していますし、昨年から取り組んできたことが成果になっているのを見ると、方向性としては間違っていないのかなと思います。青山(学院)さんや國學院さんと同じことをやってもしょうがない。自分たちは、スピードで圧倒することを宣言していますので、箱根だけというチームには絶対に負けたくないですね」

 試合では相手に挑み、スピードで圧倒し、勝ちきるレースをする。そうして強さを身につけ、駅伝を制する。

そんな姿勢が選手に浸透し、関東インカレでの結果にもつながった。これから日本選手権(6月12~14日)の各種目の決勝に何人を送り込めるか。また、昨年青山学院大に完敗した男鹿駅伝(6月27日)で前回の雪辱を果たせるか。昨年から取り組んできたチーム改革の2年目、中大は箱根でその成果を見せてくれるだろう。

【「強い順大」は今季も好調をキープ】

 今回の関東インカレ1部で総合優勝を果たした順天堂大も、前回の箱根駅伝で総合3位となった勢いそのままの走りを見せた。

 1部ハーフマラソンで小林侑世(4年)が6位、古川達也(4年)が9位、1部10000mでは松尾和真(2年)が7位、玉目陸(3年)が10位。1部1500mでは後田築(4年)が優勝し、中川拓海(4年)が3位、大野聖登(4年)が10位と3人揃って好走した。1部5000mでは池間凛斗(3年)が6位に入り、山本悠(3年)が11位、大下智矢(2年)が18位。1部3000m障害では永原颯磨(3年)が7位入賞を果たした。

 池間は、ホッとした表情を見せた。

「(入賞して)得点を取れたのはよかったです。ただ、トップと9秒以上の差がありますし、しかもラスト600mで離されたので、そこが課題ですね。

ラストは体的にもキツかったんですが、後ろに人がいたので、ここで抜かれるのは嫌だなと思い、なんとか粘りました」

 前回の箱根では総合3位となり、「強い順大」が帰ってきたことを印象づけた。今季は箱根経験者が9名も残るが、前回1区9位の池間の目にはチームがどう見えているのだろうか。

「2年生の勢いがすごくて、3、4年生が負けたらダメだなっていう思いが強いです。10000mで松尾が入賞しましたが、 2年生に助けられているようでは上級生として情けない。今のままでは箱根の優勝は無理だと思うので、ここから上級生をはじめ一人ひとりが考えや行動をもっと高めていかないといけないです」

 今回は出場を見送った吉岡大翔(4年)は、4月の日本インカレ10000mで2位と箱根からの好調を維持。池間自身も関東インカレ2週間前に5000mで13分34秒44の自己ベストをマークしている。例年、シーズン後半に向けてグっと力を上げてくる順大だけに、現時点で主力がある程度仕上がっているのは、箱根に向けての好材料と言えるだろう。

後編を読む>>>【関東インカレで見えた有力校の現在地(後編)】 王者・青学大の課題、駒大・藤田監督は4年生の奮起に期待

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