米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は9月に首脳会談を開催する予定だ。しかし日程が近づくにつれ、両国関係は再び、緊張の度合いを高めている。
米国は最近、主に中国で生産された新型人型ロボットの輸入禁止、イランの燃料を輸送した疑いのある中国の海運業者の制裁など、中国に対して相次いで制限措置を発動した。また、人権侵害の疑いを理由に中国企業40社余りへの輸出を事実上禁止した。このほか、米国は中国のトップレベルの一般大学2校を国防総省のブラックリストに組み入れ、中国のAI企業に対する制裁にも言及した。
中国側は即座に反撃した。商務部は「必要な対抗措置をとるしか選択の余地はない」と表明し、米国企業7社への制裁、無人機および関連技術の対米輸出の規制強化を発表し、外国製ソフトウェアを使用する一部のオフィス機器に対する調査を実施し、さらに米国での一部製造品に対してこれまで行ってきた、中国側の認証手続きを迅速化する措置の適用を一時停止した。
中国側は「一層の対抗措置」を打ち出す可能性に言及して警告したが、現在のところ比較的自制している。清華大学戦略および安全研究センターの孫成昊高級研究員は、中国には首脳会談の前に外交交渉を行う余地を残しておき、米中が制御不能な報復の連鎖に陥ることを避ける十分な動機があると指摘した上で、「自制を容認と誤解すべきではない」と論評した。
新たな衝突を引き起こす可能性が最も大きいのはAI分野だ。中国のAI産業は過去18カ月間にわたり米国を急速に追い上げ、多くのモデルがすでにシリコンバレーのトップ製品に肉薄している。トランプ政権関係者と米国の大型AI企業は、中国企業が「蒸留」技術を利用して米国の先端AIモデルの能力を「汲み取って」いると非難した。
「蒸留」とは、巨大で高性能なAIが生成したデータや回答パターンを学習させて、より軽量なAIモデルを効率よく育成する手法を指す。つまり、中国企業は米国製の先進的AIに「ただ乗り」して、自らのAIの性能を向上させたという非難だ。
米国政府は知的財産権の窃取を理由とした制裁の実施さえ検討しているが、中国政府は米国側が主張する「蒸留」の手法を否認した。
コンサルティング会社のアジア・グループのジョージ・チェン香港駐在デジタル業務主席は、米国が国家安全保障を理由に中国のAIモデルを封殺することは、中国のAIが、1兆ドル(約158兆円)規模に達する世界市場に参入することを制限しようと試みるに等しく、「中国はこれを座視しない」との見方を示した。
中国政府の最も威力のある対抗の切り札は依然として国外への加工レアアースの供給だ。孫高級研究員は、米国政府が制限を中国の主要なAI企業やその他の重要な商業分野に拡大した場合、中国政府は限定的な対抗ではすでに抑止力を形成できないと判断し、「より重大な経済的結果をもたらす」手段をとる方向に転じる可能性があるとの考えを示した。
しかし、米政府が首脳会談の前に中国が想定する「最後の一線」を越えたとしても、トランプ・習会談が取り消されるとは限らない。孫高級研究員は、米中はいずれも、首脳外交を「良好な関係の構築の結果としての報酬ではなく、危機管理のメカニズム」と見なしていると指摘した。そのため、米中首脳会談については「会談の議題を縮小し、焦点を危機管理に絞って、蓄積されてきた争いによって米中関係が再び悪化の連鎖に陥るのを避けることを目指す」状況になる可能性がより高いという。(翻訳・編集/如月隼人)











