ベトナムで質屋店舗約1000軒を展開するF88は、年内にホーチミン証券取引所での株式上場を計画している。F88はベトナムで質屋に付きまとっていた「うさん臭い」イメージを払拭し、さらにほとんどが家族経営だった質屋業界で大規模なチェーン展開を成功させた業界の「革命児」だ。
F88の創業は2013年だった。創業者のフン・アイン・トゥアン氏はさらに10年ほど前に、質屋を利用したことがある。トゥアン氏は当時、自ら起業したサイバーセキュリティ―を手掛ける会社の資金難で困っていた。銀行からの融資は「可能性ゼロ」だった。そこで、家財すべてを抵当にして質屋を利用することにした。しかし訪れた質屋では、上半身が裸でいれずみをしている店員がいた。店舗全体がとても粗暴な感じで、金融サービス業を営んでいる雰囲気はまるでなかった。この質屋での「とても悪い印象」が、のちのF88の創業につながった。
トゥアン氏は国外での質屋業界の動向を研究した。そして、F88の中核的業務を、オートバイや自動車を担保にした貸付にした。
車両の登録証だけを預かって金を貸す仕組みは、米国やタイ、フィリピンなどで以前から広く行われていた。しかし、「現物をどこかに隠されたり転売されたりしたら回収できない」という高いリスクがあった。トゥアン氏はGPSによる監視を導入することで、車両の動きに異常があった場合にはすぐに対応できるようにしてリスクを劇的に低減した。
さらに、車両を担保にする貸付は、オートバイなどの普及率がとても高いベトナムでは、極めて有望なビジネスモデルだった。ベトナム全国には7000万台のオートバイと500万台余りの自動車があるが、F88のサービス範囲はオートバイ市場の1.5%未満しか占めていない。このことは、F88には今も大きな発展の余地があることを意味する。
F88は中核の融資業務以外にも事業を拡大して、総合的な金融サービス企業になることも目指している。さらに具体的には車両保険や医療保険、公共料金や通信費の支払い窓口業務、送金サービスなどの分野で、そのためにベトナムの金融大手の軍人銀行やマレーシアの総合金融大手のCIMBグループとの提携を始めた。現在では、協力パートナーを通じて無担保融資を提供することも考慮している。
ベトナムでは従来型の個人経営による質屋が合計2万3000店舗あるが、数は減少し続けている。
タイ、シンガポール、フィリピン、インドネシア、マレーシアなど東南アジアの多くの国で、質屋は「庶民のための身近な頼れる金融機関」として社会に浸透している。いずれの国でも家族経営の個別店舗が主体である状況から、組織が整備された企業によるチェーン展開が発展する傾向がある。また、インドネシアやマレーシアではイスラム教の教義に合致する経営が見られるなど、それぞれの国情に合致する業務方式を導入する状況もある。米国のシカゴに本社を置く世界的な市場調査会社であるコグニティブ・マーケット・リサーチによると、25年の東南アジアの質屋市場の規模は10億ドル(約1600億円)近くで、その後は年平均約4%で成長して33年には13億ドル(約2000億円)に達すると予想される。(翻訳・編集/如月隼人)











