中国では、大学などを卒業しても働き口を見つけられない若者の就職問題が深刻だ。中国社会科学院社会科学所の李春玲研究員によると、これまでは就職しようと思ってもできない若者が「親のすねをかじる」例が多かったが、最近では勤め先をすぐにやめてしまう「自主的な親のすねかじり族」が増えている。
中国新聞社が報じた。

 大学を卒業しても就職できない人は、2009年時点で16万5100人発生したとの統計がある。大部分は「就職しようとしたができなかった」若者で、やむをえず「親のすねをかじることになった」とされてきた。しかし最近では、いったん就職してもすぐにやめてしまう若者が増えている。

 大都会を離れ、地方の実家に戻る例もある。両親も当初はあせり、コネを頼るなどでわが子のために職探しをするが、肝心の本人に働く意欲がない。
女性の場合には「結婚相手を見つけて、専業主婦になれればよい」と考える場合もある。

 中国の家庭では男女共働きが一般的で、健康面に問題がなく、それほど裕福でもないのに職に就こうとせず「専業主婦にでもなろう」という発想は、少なくとも年配の人から見れば、かなり異様だ。

 20代の若者の多くは、給与水準が高く福利厚生が充実している職場を探すが、希望通りの就職ができるとはかぎらない。結果として、さまざまなことを理由としてすぐに退職し、親元に戻ってしまう。

 雇用側に◆残業代を支払わない◆休日出勤が常態化――など問題がある場合もあるが、働く側も「次の仕事場を探す」のではなく、勤め人であることそのものを嫌になってしまう傾向がある。転職をしても状況がさほど変わらず、諦めて「すねかじり族」になる人もいる。
留学して国外で学位を取得して帰国したなど、有利な条件での就職がしやすいはずの人の間でも、「すねかじり族」は増えている。

 山東大学報道メディア学院の周怡教授は、「すねかじり族」の増加は親と子の“共同作業”の結果と分析した。高学歴者は理想が高く面子(メンツ)にもこだわるので「自分を安売りはしない」との意識が強い。そのため、「現在は待機中。いずれは発奮する」という精神面におけるモラトリアム状態になりやすい。

 一方の親は、わが子を溺愛(できあい)して育てるので、子どもが精神的に社会性を獲得しきれていない場合がある。
問題は精神面における親子の相互依存であり、「すねかじり」が親子の和諧(調和)のひとつの形態になっているという。

 周教授は「若者の『すねかじり現象』は、一人っ子という状況が家庭と社会にもたらした弊害」、「単に経済の問題でなく、心理面の問題でもある」との見方を示した。(編集担当:如月隼人)