第19週「最高のコンビ」第107回 2月8日(木)放送より。
脚本:吉田智子 演出:鈴木 航

107話はこんな話
リリコ(広瀬アリス)とシロー(松尾諭)の漫才の打開策として、てん(葵わかな)は「しゃべらん漫才」を
提案するが、それによって仲間たちに溝が生まれてしまう。
どうなる朝ドラ受け
6日に、「あさイチ」の有働由美子アナと井ノ原快彦が番組を3月いっぱいで卒業すると発表され、
7日に、「あさイチ」では柳沢秀夫も交えた3人で、お別れの挨拶をした。
彼らは2010年に「あさイチ」がはじまってからずっと司会をやって来た。
8日の朝は、朝ドラ前に放送されている「おはよう日本」(関東版)で高瀬アナが「ふたりの関係がどうやら近づいてきたような気がして気になります」と朝ドラ押し。このレビューでもときどき取り上げているが、ときどき飛び出す高瀬アナの朝ドラトークが面白く、今後は高瀬アナによる「朝ドラ前」に期待がかかるかもしれない。ただ、ネックは、関東版のみであることだが。
しゃべらん漫才
良かれと思って、あえてしゃべらないやり方を、てんがあっけらかんと提案。
いつものようにすぐ「ええな」「ええな」となるかと思ったら、雲行きがあやしい。
しゃべってなんぼが漫才やとリリコは反論、シローもアホみたいに笑われるなんてプライドが許さないと憮然となる。
最初はドイツへの音楽留学の資金稼ぎと思ってやっていたシローが、いつの間にやら、漫才に熱心になっていた。
リリコも、最初は、相方を好みでないと思っていたはずが、すっかりシローの味方に。
ところが、シローが頑張ってうまくなればなるほど、面白くなくなっていく。
てんとしては、女性上位の夫婦喧嘩が面白いと思ってのことで。万城目夫妻(藤井隆、枝元萌)しかり、風太(濱田岳)とトキ(徳永エリ)夫婦しかり。
だから、てんは粘る。
まずはリリコに深く謝ったうえで、いま一度、しゃべらん漫才を提案する。
リリコは聞く耳をもち、発想を変えてみようと考えるが、シローはリリコまで自分をばかにするのかと怒り出してしまう。
リリコ「お金も儲かってドイツにもいける」
シロー「なんやのそれ」
リリコはシローのことを思いやり、シローはリリコにすっかり心を許したからこその、すれ違い。
「おはよう日本」の高瀬耕造アナが「ふたりの関係がどうやら近づいてきたような気がして気になります」と解説していたように、ふたりはもうすっかり恋人か夫婦のような口調になっている。いっつもご飯を一緒に食べているし(セットの問題もあるが、社食のようなマンマンで)。その展開は速い。でも、漫才の完成までは遅い。
夫婦漫才を通して、男がしゃべらず、女がしゃべるうえに男を怒るという女性上位に転換し、男がこれまで守ってきた価値観を崩すという展開を描くのは、主に女性視聴者を主にした朝ドラらしい。いいモチーフを見つけたと思う。
今日の、わろ点
主軸(リリコとシロー)の端で、コツコツ、物販事業をがんばっている隼也(成田凌)。
似顔絵饅頭を作り出した。
アメリカ(海外)ではグッズがたくさん売っている様子を見てきたからこその提案だった。
風太に「アメリカ」言うのを禁止されているため「海外」と言う隼也。「海外」ならいいのか。
しゃべらん漫才・裏面(うしろ面)
ここから、ちょっと小姑トークします。
リリコとシローが、漫才を通じて心を通わせたり、傷つけあったりする、こういう展開は悪くない。
ただ、できれば「解散や!」で引っ張らないでほしかった。この間、それはもうやっていたので。
百歩譲って、「解散」を使うなら、このコンビ、何かといえば「解散」を言い続けていることを強調するようなもう一工夫が欲しかった。
まさに「引っ張りな!」(「時うどん」ネタを楓〈岡本玲〉がオマージュして新作落語に取り入れたという設定なんだろう)である。
また、シローが頑張れば頑張るほど痛々しいという事実が、トキと風太の夫婦喧嘩にも若干感じる。
若い俳優が頑張れば頑張るほど、ただキツく聞こえてしまい、耳障りに感じる視聴者もいるだろう。
いい塩梅というのはなかなかに難しい。
(木俣冬)