『おかえりモネ』第10週「気象予報は誰のため?」

第46回〈7月19日(月)放送 作:安達奈緒子、演出:梶原登城〉

『おかえりモネ』第46回 百音が“考える前に動く人”に変貌 がらりと雰囲気が変わり、東京編に突入
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

※『おかえりモネ』第47回のレビューを更新しましたら、Twitterでお知らせします


東京編のはじまり。気象予報士の資格をとった百音(清原果耶)は東京に出て来た。築地の汐見湯という銭湯をリノベーションしたシェアハウスに住み、朝岡(西島秀俊)の所属するウェザー・エキスパーツという気象会社の入社面接を受けることになる。
がらりと雰囲気が変わり、マイコ、高岡早紀、井上順、今田美桜らが扮する個性的な登場人物も続々現れ、期待に胸膨らむ。

【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第46回掲載中)

「意外と無鉄砲?」

2016年4月、東京に出てきた百音。東京駅から地下鉄に乗らず、わざわざ船(水上バス)に乗って隅田川で築地にやって来るのが海育ちらしい。第45回のラストシーンの川と、隅田川の川がリンクする。海や川を見て暮らすと、他の地に行っても海や川を見るとホッとするもので、見知った風景と近いものに惹かれる気持ちは共感できる。東京駅からだとどういうふうに水上バスに乗ったのかよくわからないが、観光もかねて寄り道しながら来たのかも。

第41回菅波(坂口健太郎)に「たまにはなんも考えず動いてみればいいのに」と言っていた百音。
なんも考えずに動いて東京に来ることにしてしまったようで、ウェザー・エキスパーツに入社が決まったわけでなく、住む家も決めていなかった。

住居は、龍己(藤竜也)の築地の知り合いのツテで決めて、それから面接。汐見湯の大家・菜津(マイコ)は、まだ就職が決まってなかったと知って「意外と無鉄砲?」とあっけにとられる。

常識で考えると、入社決定→上京、もしくは上京→職探し……という順番であろうが、百音は見切り発車。なんとなくウェザー・エキスパーツに入れる気持ちで上京してしまうという呑気さ。宮城編の「私何もできなかった」と立ちすくんでいた時とはまるで違う。
考える前に動く人に変貌している。

しかも、あんなに家族から離れたがっていたのに、けっきょく家族に頼っている。中にはこういうキャラに違和感を覚える視聴者もいるかもしれないが、もともと家族愛の強い家庭に育ったのだから、その愛を思いきり享受していいと思う。ウェザー・エキスパーツにも朝岡のコネでなんとなく内定(面接は便宜上)していたに違いない。そうでないといきなり東京には出ていかないだろう。

『おかえりモネ』第46回 百音が“考える前に動く人”に変貌 がらりと雰囲気が変わり、東京編に突入
写真提供/NHK

大家さん菜津を演じるマイコは『おひさま』(2011年)でヒロイン陽子(井上真央)の親友役だった。
井上と満島ひかりとマイコが演じる女ともだち3人組が明るく、結束力が高く、キラキラしていた。

今回も菜津は澄んだ高音でケロッと明るい。一見おしゃれなシェアハウスだが、リフォーム予算が足りなくて裏側(住居)は昔のまま。「こんな古いとこイヤよね」と弱気なことを言う菜津に、百音は「実家みたい」と優しい。こういう他者を思いやれるところは変わっていない。

『おかえりモネ』第46回 百音が“考える前に動く人”に変貌 がらりと雰囲気が変わり、東京編に突入
写真提供/NHK

いきなり巻き込まれる百音

面接前にウェザー・エキスパーツに下見に来た百音。以前、朝岡と一緒に登米に来た野坂(森田望智)内田(清水尋也)と会い、いきなりJテレというテレビ局につれていかれる。


インフル陽性で出られなくなったいつものスタッフの代わりに急遽、野坂、内田、神野マリアンナ莉子(今田美桜)、百音が報道番組の手伝いをすることになった。「資格があるからって……」と不信感を募らせるのはテレビ局の高村デスク(高岡早紀)。でも朝岡は達者な言い方で丸めこむ。

「若手に経験を積ませたい」と言う朝岡。「気象予報はチーム戦です」とわかるようなわからないことも言う。それにしても百音が入るとは……。
いかにもドラマである。新人が急遽抜擢されて奮闘するという“お仕事もの”の雰囲気になってきた。

海や山と自然にあふれていた風景がテレビ局の雑然とした機械だらけの風景に。高村、神野、野坂……と女性陣も華やかになってきた。百音もテレビの世界に揉まれて、莉子のようにきりっと垢抜けた表情に変わっていくだろうか。

マリアンナというセカンドネームを持っている莉子は、朝岡の代わりにキャスターを務めるとやる気満々。
よくあるドラマのパターンだと莉子が百音のライバルになって何かと対抗意識をむきだしにしたりするものだが、『モネ』ではどうなるだろうか。最近はあからさまなライバルは描かない傾向にあるが、はたして……。
(木俣冬)

『おかえりモネ』をさらに楽しむために♪








番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami