仏国際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語版は22日、「中国で顔認識技術が一般市民への罰金賦課に用いられ始めている」との仏紙ル・モンドの記事を紹介した。

ル・モンドの記事は「これまで顔認識技術は政治的な異見者や問題があるとされる活動家を対象に運用されるものと考えられてきたが、今では一般の人々の日常生活におけるささいな違反行為にも使われ始めている」とし、李岩(リー・イエン)さんのケースを紹介した。

李さんは、問題視されるような団体活動などに関わらないごく普通の市民だったが、今年3月末に警察から50元(約1160円)の罰金が科されたとのショートメッセージを受け取った。理由は、上海市の歩道を自転車で走行したというものだった。

李さんは確かにその日、急いでいたため歩道を数十メートル自転車で走行していた。しかし、その場で警察官に呼び止められたわけでも、自転車に個人が特定されるようなナンバープレートが付いていたわけでもなかった。警察はメッセージで「電子技術」によって李さんを特定したと説明していた。李さんが念のため警察に電話をかけて確認したところ、自分の顔が「公共の監視カメラによって自動的に認識された」ということを知ったという。

記事は「近年、中国の街の至る所に監視カメラが設置されており、その具体的な数は公表されていない。中国の人々はすでに監視カメラの存在に慣れており、政府が市民の安全を高度に重視しているからだと考える人が多い。また、自分が問題のない人間だと考えている多くの人は、このシステムで自分が対象にされることはないと思っていた。しかし、現在では、顔認識技術が日常のささいな違反行為の処罰に用いられるようになり、人々の関心を呼んでいる」と伝えた。

そして、「実際には微信(ウィーチャット)と支付宝(アリペイ)という二つのアプリの普及だけでも、すでに個人を追跡することが可能になっている」と指摘した。また、中国における顔認識技術の活用はすでに多くの国を上回っているとし、「空港では搭乗時に搭乗券を提示する必要はなく、ゲートで顔認証を通過するだけで確認が完了する。

いくつかの団地では住民は顔認証だけで入ることができ、フィットネスジムでも会員カードを提示する必要はなく、入口に近づくだけで数メートル離れたカメラが本人を識別する」と紹介。一方で、「利用者は利便性と引き換えに、あらかじめ自ら個人情報を提供している」とも言及した。
中国で顔認識技術が発展、一般市民への罰金賦課に用いられ始める―仏メディア

今回、李さんが警察によって特定されたことについて、記事は「自転車で移動している最中で、しかもかなり離れた距離から顔が認識された可能性が高いことを示している。その背後には膨大なデータベースが存在しているとみられ、それは少なくとも上海をカバーし、場合によっては全国を網羅している可能性もある」と指摘。李さんが「私のような目立たない人間でさえ、どの通りにいても自動的に識別されるのだとしたら、将来この技術がどこまで発展するのかは想像に難くない。この感覚は何とも言えず奇妙」と語ったことを伝えた。

記事は、すでに2017年の時点で中国では顔認識技術による取り締まりの試験が始まっていたこと、深センなどの都市でも信号無視をした歩行者などに対して顔認識で処罰する試みが行われていたことに触れ、「これらの措置は主に試験段階にとどまり、一般市民はニュースで断片的に知る程度だったが、現在、このシステムは大幅に拡大している。現地警察によると、上海中心部の徐匯区だけでも、自転車や電動バイクなどの違反を取り締まるために120台の顔認識カメラが設置されており、このほかにも治安維持や車両の速度測定を目的としたカメラ、団地の管理や商店が独自に設置した各種カメラが存在する」と説明した。

そして、「一部のネット掲示板では、違反した自転車利用者と顔が似ているという理由で誤って判定されたと不満を訴える声もあるが、多くの人は時間をかけて異議申し立てをするよりも、罰金を支払って解決することを選んでいる」と伝えている。(翻訳・編集/北田)

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