馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。日本ダービーは特別編で、武豊騎手=栗東・フリー=のダービー6勝を【ダービー武豊伝】として取り上げる取り上げる。

最終回は2022年のドウデュース。コロナ禍から明けた祭典で、史上最年長V競馬場に熱を呼び戻した。

 自然と「ユタカコール」が沸き起こった。初夏の日差しを背に受けた武豊とドウデュースのウィニングラン。正面スタンド前のウィナーズサークル手前に来ると、ファンの拍手がコールへと変わった。一部から出た声が自然発生的に波のように広がる。コロナ禍で禁止されていた声を出しての応援も忘れてしまうぐらい、6万2364人の抑えていた感情が爆発した。

 その中心には競馬界をリードしてきたレジェンドの姿があった。2013年キズナ以来、9年ぶり史上最多となる6度目の頂点。しかも、昨年のレースレコードを0秒6も上回る2分21秒9の走破時計にどよめきも漏れた。ユタカは「感無量です。見える景色は最高。

(コールは)懐かしいなと思いました。レースに勝ってウィニングランをして、ファンの皆さんに迎えてもらえるのはジョッキーとして一番の励みになります」。コロナ禍で憂いに包まれた世界に、愛馬とともに勇気と6度目の衝撃を与えた。

 完璧なエスコートだった。後方の14番手から運んだが、向こう正面では左右に馬がいない理想的な形で追走。「ああいう形になればと思っていたが、思っていた以上にいいポジションを取れた」と自画自賛する最高の騎乗。大外に持ち出した直線は、抜け出してから一瞬ふらついたが、背後から聞こえてきたイクイノックスの蹄音に再び闘志を燃やし、首差で抑え込んだ。9年前の勝利時に「帰ってきました」とお立ち台で叫んだが、今回も「また戻ってきました」のレスポンス。53歳2か月15日での勝利は、増沢末夫元騎手の48歳7か月6日(1986年)を上回る史上最年長優勝。競馬界の中心にはいつも「武豊」がいる。

 壮大な夢を成し遂げる時が近づきつつある。キーファーズ(馬主)の松島正昭代表とは、オーナーになる前から友人関係。

いつか「2人で大きなところ」と描いていた夢が実現し、表彰台で「夢がかないましたね」と2人で喜びをかみしめたが、秋のターゲットはすでに登録を済ませている世界の頂点、凱旋門賞。「ダービー馬で行けるという、こんな胸が躍ることはない。ドウデュースとともに世界を目指して頑張りたい」。夢には続きがある。今度は3歳王者と、日本のホースマンが渇望する世界の頂点を奪いにいく。

〈20年ぶりの“コンビ”でV〉

 友道調教師は2018年のワグネリアン以来、4年ぶりの勝利。その間に当時、悲願の初勝利だった福永は2勝を積み重ね、愛馬は今年1月に天国へと旅立った。「4年か。何か随分と昔のような気がする。ユーイチにも抜かれたしね」。特別な舞台だからこそ、時の流れを感じていた。

 その原点は技術調教師で松田国厩舎に在籍していた開業前の2002年。

初めて現地で見たダービーで、調教に携わるタニノギムレットが大外から突き抜けた。「あの時は小泉(純一郎)首相が来ていたし、場内の雰囲気も独特。ダービーは特別だな、と強烈に思いましたね」と振り返る。

 当時の馬上にいたのは武豊。今年は開業以来初めて、そして20年ぶりの“コンビ”で臨んだ祭典だった。当時は側で見ていた表彰式の舞台に一緒に立ち、レジェンドと勝利の喜びも共有。現役単独トップの3勝目は原点に立ち返るような勝利でもあった。

 〈2022年の日本ダービー〉

 1番人気は共同通信杯を勝っていたダノンベルーガで、2番人気は久々だった皐月賞(2着)を叩かれたイクイノックス。ドゥデュースは3番人気で、さらに皐月賞馬ジオグリフの4頭が上位人気を形成した。前半5ハロン58秒9で縦長の隊列。直線では早め先頭だったアスクビクターモアをラスト100㍍でドウデュースがかわし、外から食らいつくイクイノックスを首差封じ込んだ。

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