中国はイラン戦争にどのように対応しようとしているのか。習近平国家主席の真意は果たして?
王毅外相らが積極的な外交展開
2月28日に始まった米国とイスラエルによるイラン軍事攻撃に関し、中国は当初から態度を旗幟鮮明にしていない。中国外務省は3月初め、「米国とイスラエルが国連安保理の承認なしにイランを攻撃したことは国際法に違反する」とし、深い懸念を表明するだけで、イラン情勢への関与には一切触れなかった。
だが、4月7日に米国とイランが2週間の一時停戦で合意、交渉することが伝えられると、イランへの中国の関わりをほのめかすさまざまな情報が流れた。トランプ米大統領は「中国がイランを交渉の席に着かせ、停戦に導いたと考えている」と語った。ニューヨーク・タイムズは「イランはパキスタンの外交努力と主要同盟国である中国の土壇場での介入によってパキスタンの停戦提案を受け入れた」と報じた。
実際、王毅外相が2月末からイランやパキスタンのほか、ロシア、英国、フランス、中東諸国の外相らと26回も電話会談を行ったのに加え、中国政府はサウジアラビア、バーレーン、エジプト、クウェートなど5カ国に中東担当特使を派遣し、イラン戦争の解決に向けた外交努力を積極的に展開したことが確認されている。
相次ぐイランへの軍事支援説
4月に入ると、欧米メディアの間で中国によるイランへの軍事的支援の可能性を伝える報道が相次いだ。
ニューヨーク・タイムズとCNNテレビは中国がイラン向けに新型の防空システムを供与する準備をしていると報じた。また、中国の広東省の港から固定ロケット燃料の原料を運ぼうとしたイラン船籍の貨物船を米海兵隊が拿捕したとの情報も流れた。
さらに英紙フィナンシャル・タイムズはイランが米・イスラエルの軍事作戦に対する報復として行った中東の米軍基地への攻撃で中国から秘密裏に購入した偵察衛星を利用していたと伝えている。
イラン問題の専門家は、かつて中国はイランへの主要な武器供給国だったとしながらも、2015年に国連による対イラン禁輸措置発動されてからは供給を停止したと述べている。ただ、中国企業がイランの兵器製造の継続を可能にするような技術の供与は続けている可能性があるという。
こうした中、トランプ大統領は4月15日のFOXビジネスとのインタビューで、習近平国家主席に対しイランへの武器供与の停止を要求する書簡を送ったことを明らかにするとともに、習主席から供与はしていないとの返事があったと述べている。
イランは重要な友好国のはずだが…
中国がイランを軍事支援しているかは必ずしも明確ではないが、経済面でイランを支えていることは確かだ。中国は2021年、期間25年の「包括的協力協定」を締結した。最大4000億ドル規模の投資を想定しているといわれる。
同協定に基づきイラン産原油の約9割が中国に輸出されており、中国の輸入原油の13%をイラン産が占める。ホルムズ海峡経由で中国に輸入される原油は50%以上というデータもある。米国などの制裁を受け経済不振にあえぐイランにとっても中国への原油輸出は重要な資金源だ。
イランが中国の広域経済圏構想「一帯一路」の参加国であることも見逃せない。政治・外交面でもイランは主要新興国で構成するBRICSや上海協力機構(SCO)といった中国主導の国際組織の有力メンバーであり、習近平政権が重視する友好国であることは論をまたない。中国がイランを支援する要因は多数あるのだ。
習近平主席、米中首脳会談を控えトランプ批判を避ける?
だが、中国はイラン戦争に関して公然とイラン支援や対米非難を口にすることは控えている。王毅外相は米国とイランの交渉中に米国とイスラエルがイランを攻撃し、主権国家の指導者を公然と殺害したことに触れ、「容認できない」と述べたが、それ以上踏み込んだ発言はしていない。
習近平主席は4月下旬にイラン戦争に関し初めて言及し、即時停戦を呼びかけ、ホルムズ海峡の船舶通航を再開すべきだと述べたものの、トランプ政権を直接批判することはせず、慎重な態度を崩していない。習主席が対米批判を避けているとみられる点については多くのメディアが指摘しているように5月14、15日の米中首脳会談を控えトランプ大統領を刺激したくないからだろうと推測される。
複数の中国問題専門家は習主席が今回のトランプ大統領との会談で台湾問題を最優先課題にすると予想する。米国は従来、「台湾の独立を支持しない」としてきたが、習主席は「台湾独立に反対する」と米国の立場をより鮮明にするようトランプ大統領に迫る考えだという。
米中首脳会談に先立ち、習主席が台湾野党・国民党の鄭麗文主席と北京で会談し、国民党との「融和」姿勢を強調、独立志向の強いとされる台湾与党・民進党の頼清徳政権を強くけん制したことも、台湾問題を最重要視するとのメッセージを米政府に送ったとも考えられる。
ただ、首脳会談でトランプ大統領がイランへの中国の対応を持ち出した場合、習主席がどう出るのか。米中首脳会談はイラン情勢や台湾問題とも絡み、ますます大きな注目を集めることになりそうだ。











