フランスなど欧米を中心に事業を展開する自動車メーカーのステランティスは8日、スペインにある自社2工場で中国の電気自動車(EV)メーカーの零跑汽車(リープモーター)のモデルを生産し、さらに傘下のオペルブランドの純電気SUVを共同開発するなど、零跑汽車との提携を強化すると発表した。零跑汽車にとっては、欧州で生産することで、中国から輸出した場合の関税を回避する狙いがあるとされる。

フランスメディアのRFIが伝えた。

欧州の完成車工場の平均生産能力利用率はわずか約50%だ。EUが中国から輸入するEVに追加関税を課す状況にあって、多くの中国自動車企業が欧州での「現地化生産」を模索している。一方の欧州の伝統的な自動車企業は工場利用率を向上させ、EVの価格を引き下げることを急務としている。ステランティスのほか、フォルクスワーゲンのドイツ工場やフォードのスペイン工場についても、中国企業との同様の協力が検討されている。

ステランティスの発表によると、零跑汽車は早ければ2026年内にスペインにあるサラゴサ工場で自社のB10モデルを生産する。それと同時に、双方はオペルブランドの新型SUVを共同開発する。ステランティスはさらに、1つまたは複数の零跑汽車のモデルをマドリードにある工場で組み立てさせることも検討している。

ステランティスはすでに、自社が51%、零跑汽車が49%の合弁会社を保有している。そして、マドリードの工場を、この合弁会社の保有にすることも検討されている。

零跑汽車は28年からマドリードで欧州および世界市場向けのEVを組み立て、段階的に「メイド・イン・ヨーロッパ」の要求を満たしていく。すなわちより多くの現地部品を採用し、EUが中国から輸入されたEVに課す高額関税を回避する計画だ。

一方でステランティスは、マドリードの工場で現在生産しているシトロエンC4が将来は生産停止になるため、零跑汽車ブランドの製造は「特殊な重要性を持つ」と表明した。

また、28年にはオペルの純電動大型SUVの生産がスペインのフィゲルエラス工場で始まる。この工場はオペルで最も歴史の古い拠点の1つであり、1982年以来、累計で1000万台を超えるオペルのコルサを生産してきた。新型SUVはオペルのドイツチームが主導して設計するが、同時に中国とドイツにある国際研究開発チームが開発に加わり、零跑汽車の電気プラットフォームとバッテリー技術を採用する。

ステランティスは、中国のサプライチェーンの高い競争力がこのモデルのコスト削減を助け、そのことで、欧州市場での価格競争力をさらに強めると強調した。

ステランティスはさらに、新型モデルの開発サイクルは「2年以内」に短縮されると予想され、中国の自動車企業の「高速研究開発」に目に見えて近づくと表明した。欧州の伝統的な自動車企業の現在の新型モデル開発時間は、通常で4年以上を必要とする。ステランティスは、オペルがグループ内部の「中欧共同開発モデル」の先駆者となり、この開発モデルは将来、さらに多くのブランドや車種に広がる可能性があると表明した。

ステランティスをはじめとする、欧州の伝統的な自動車企業の中国企業に関連する動きは、欧州の労働界にも複雑な影響を与えている。例えば、ステランティスはすでに、パリ首都圏のポワシーでの自動車生産業務の終了を発表し、フランスの産業界に波紋を引き起こした。フランスの労働組合である「労働者の力」のステランティス支部は零跑汽車との提携強化について「表面上は単なる産業協力の取り決めにすぎないが、実際には自動車産業の構造に深刻な転換が起きていることを示している」と警告した。

欧州に「食い込む」中国自動車メーカー、背景には関税対策も―仏メディア
零跑汽車(リープモーター)

「労働者の力」は、ステランティスが欧州の多くの国で類似の協力モデルを推進しており、中期的に見て、フランス本国の研究開発能力や中核業務、戦略的意思決定機能が段階的に弱められる可能性があるとの見方を示した。

一方で、スペインの有力労働者団体である労働者委員会(CC.OO)は、ステランティスの動きを歓迎し、中国企業との協力が、「マドリードの工場に真に将来性のある産業の未来を描き出す」との考えを示した。(翻訳・編集/如月隼人)

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