成功するビジネスコミュニケーション(38)

■「圏子」とは

 中国には、いや中国人にはといったほうがよいかもしれませんが個人的な人間関係をベースとしたネットワークである「圏子(quanzi)」というものが存在しているようです。これは簡単に言うと地縁・血縁や友人関係などをベースとしたインフォーマルな人間関係のことで、職場をはじめ社会生活の様々な場面で機能しているといわれています。


 日本でインフォーマルネットワーク(非公式なネットワーク)の代表と言えば派閥や同期入社の人脈などが挙げられますが、これらは出身地や出身大学、入社年次である程度見分けがつきますし、なんといっても多くの場合、社内という限定的・内向な場面でその力を発揮する傾向があるという点が特徴でしょう。

 あくまでも筆者の認識ですが中国人にとっての「圏子」では出身地や出身大学は構成要素の一つではありますが、それ自体の存在を目的化して完結するものではなく、また社内に限定されず、より広いビジネス・社会的場面で機能するという点で、日本のインフォーマルネットワークとは一線を画しているようです。

 これは、社会的な地位がどの会社のどの役職かということで決まってくることが多い日本の企業文化との違いといってもよいかもしれません。

 ちなみに、欧米には社会的階層をベースとしたクラブ社会が非常に長い時間をかけ排他的なコミュニティーを形成しているという印象を持ちます。

 アジアの他国の例をあげると、ベトナムにも友人関係をベースとした相互支援のネットワークはありますが、あくまでも友人ネットワークであり、メンバーの流動性は低く限定的であるようです。

 ここで日本、欧米、ベトナムにおけるインフォーマルネットワークの例をあげましたが、「圏子」の場合は中国の社会変容のように非常に変化が激しく、「圏子」のメンバーも固定的でなく流動性があるようです。中国の都市部では社会的地位獲得に関し、より個人の能力が基本となる(と信じられている)からかもしれません。

 ネットワークを社内に限定する日本、階級的な欧米、友人関係とみるベトナムなどと異なり、「圏子」を構成しているメンバー個々人がある程度同じスピードで成長していかなければ、だんだんと置いて行かれる(「圏子」からは疎遠になっていく)ことがあるようです。その意味では本人の人柄と実力が問われるシビアな世界かもしれません。

■日本人にもある「圏子」

 今回取り上げた「圏子」は中国人的発想ではありますが、日本人を含め、グローバルビジネスを展開する人たちの間には実体として存在しているといっていいでしょう。

 筆者も経験がありますが、経営企画部などの管理部門で新規事業や海外ビジネスを推進する場合、ノウハウや人脈など知的リソースが社内にはなく社外の信頼できるネットワーク(つまり、ここでいう「圏子」)に助けを借りたりもします。

 また、「圏子」はインターネット上でウィルス侵入を阻止するファイヤーウオールのように、外部の不可解な人間のアプローチを防ぐこともあれば、全く違う世界の人間(ただし、仲間の紹介なので一定の信頼は担保されている)との知遇を得て、多様な意見に触れることもあるようです。


 言葉の説明だけでは「友人・知人のネットワーク」で済ませられてしまうかもしれない「圏子」ですが、さまざまな場面で機能することがある見えざるネットワークともいえます。(執筆者:小平達也・株式会社ジェイエーエス代表取締役社長)

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