◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
長嶋茂雄さんが亡くなって間もなく1年。撮影を続けて思い出すのは、プレー中よりグラウンド外で見せた意外な反応ばかりだ。
95年の福岡遠征。ある日、日課だった早朝散歩を張り込んだのは私だけだった。監督はマネジャーを伴って宿舎近くの遊歩道に現れた。近づいてきたので広角レンズで撮影すると、カメラ越しに目が合って「君、地元の人?」と話しかけられた。
チームに同行していたとはいえ、顔見知りのベテランならともかく、若いカメラマン一人一人までは覚えていなかったのだろう。想定外の展開に動揺し、「東京の…報知のカメラマンです」と答えながらシャッターを切ると、いたずらっぽい笑顔を見せながら宿舎へと戻っていった。
03年の青梅マラソンでは、スターターを務めたミスターをすぐ横で撮影した。レース直前に「ピストルを構えながらカメラ目線でポーズを」とお願い。さわやかな笑顔で応じてもらった。想定通りだったのはここまで。スタートするとランナーに手を振ったり拍手をしたり。私の稚拙な演出を吹き飛ばすように、何倍も自然な表情でフォトジェニックな姿をはじけさせた。
長嶋さんとの1対1の撮影を繰り返して感じたのは、メディアやファンに対する姿勢がいつも想像をはるかに超えて、強烈な印象を残すという事実。どんな相手にも「期待に応えたい」という姿勢をカメラを通して実感できた瞬間は、どれも忘れない宝物だ。(写真担当・堺 恒志)
◆堺 恒志(さかい・こうし)1992年入社。巨人やボクシングなど幅広く取材。










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