次代を担う逸材たち~アマチュア野球最前線 第6回
宮崎商・末田櫂帆&山口暖人&今村魁晟

 今年2月、プロ野球の宮崎キャンプに行った際、せっかくだからと小林西高校の二刀流・児玉哩臥(りいが/2年)の取材をお願いしていた。だが学校行事の都合で難しくなり、そのことを宮崎学園高の濱田登監督に話したところ、「宮商(宮崎商業高)に末田がいるじゃないですか。

彼は実戦で使えますよ」とアドバイスをくれた。そんな濱田監督のあと押しもあって、宮崎商へと向かうことになった。

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【昨夏は不動の3番・遊撃手で活躍】

「はい、自分の場合は、チャンスに一本打てるバッティングが長所だと思っています!」

 宮崎商の末田櫂帆(すえだ・かいほ/3年)は昨年夏、2年生ながら不動の3番・遊撃手として、宮崎大会を勝ち抜き甲子園出場。甲子園では初戦で敗れ、末田もノーヒットに終わったが、それでも2つの四球を選ぶなど、最低限の役割は果たした。

「タイプとして、長打をガンガン打つほうじゃないですが、その代わり、狙うボールを絞ったらもう迷いません。初球から自分のスイングをする思いきりのよさには自信があります」

 ここまで話すのに、少し時間がかかった。ひと言、ひと言を考えながら、意思のこもった言葉を絞り出す。性根の据わった九州男児。これなら、ちょっとやそっとの場面で気持ちが揺らぐこともないのだろう。

「入学以来、朝練も欠かさず続けてきて、バッティングもようやく自分のものになってきたかなという実感が湧いてきたというか......」

 入学してからここまでの2年間、きっと人知れず地道にコツコツ振り込んで、その感覚をようやく体に染み込ませてきたのだろう。途切れがちな語り口からは、黙々と積み重ねてきた努力の時間が伝わってくる。

 昨年春の宮崎大会決勝、相手は延岡学園。3対3の同点で迎えた9回表、二死三塁で末田に打席が回ってきた。

「狙っていた真っすぐを振りきったんです。それがサード強襲のヒットになって、勝ち越しました」

 なにより、打った投手がすごかった。

「ピッチャーですか? 藤川さんです」

 延岡学園の藤川敦也はその秋、オリックスからドラフト1位指名された九州トップクラスの剛腕だ。そういう自慢話を、自分から明かさず最後まで胸の内にしまっておくあたり、大物感が漂う。

 そして昨年夏、2年連続甲子園出場を決めた宮崎大会決勝の日南学園戦でも、1点を追う9回に同点打を放ち、つづく4番・水谷友哉の逆転打につなげてみせた。

「その時もスライダーに狙いを絞っていて、真っすぐ2球で追い込まれましたが、『次は(スライダーが)来る』と思って......。ジャストミートではなかったのは悔しかったですけど」

【昨年秋から投手も経験】

 その"ジャストミート"が4球、5球とつづくバッティング練習。コンパクトな振り幅のレベルスイング。172センチ、72キロと小柄ながら、インパクトではしっかりと出力を瞬発させている。見るからに、打ち取りにくい打者だ。

 時折、バットのヘッドが早く出て、左方向へ引っかけてしまいそうになるが、そこからグッとこらえて、逆らわず広角に弾き返す。

 誰だってバットを持てば、引っ張って遠くに飛ばしたくなるもの。そのほうが、投手に対する"勝利感"を得られるからだ。

だが末田は、そんな自己満足よりチームの勝利を最優先する。それは新チームになってから、投手としてマウンドに上がる機会が増えたことが大きい。

「新チームになってから、ピッチャーで試合に出ることが多くなって、投げるほうもレベルアップしたいんです。昨年秋の大会で、ちょっと打たれ始めると熱くなって、連打されて負けてしまったので......」

 130キロ台後半の速球に、スライダー、チェンジアップ、カットボールを交えて、打者のタイミングを外しながら打ち取っていく。自分自身をコントロールできるようになれば、制球力も自ずと向上するだろう。

 本職のショートに加えセカンドもこなし、昨秋はエースナンバーを背負うなど重責を担うが、宮崎商のバックには頼もしい2年生がいる。

【九州にはいない大型内野手になれる】

 頼もしい2年生とは、捕手の山口暖人(はると)、そして内野手の今村魁晟(かいせい)だ。このふたり、昨年の甲子園初戦の開星(島根)との試合に山口は8番・レフト、今村は6番・ファーストでスタメン出場していた。

 甲子園の大舞台で1年生レギュラーは目立つはずなのに、そのわりに印象が薄いのは、ふたりとも無安打、2三振で終わってしまったせいかもしれない。

 しかし、あれから秋を過ごして、冬を越えて、随分と練習に打ち込んだのだろう。見るからに、高いレベルで野球ができそうな体つきになっていた。

 今村は昨年秋からセカンドを守り、末田がマウンドに上がる時はショートに入る。

「甲子園の時は体重が60キロちょっとで、この冬に6、7キロほど大きくなったんですけど、見てのとおり、まだ細い。

あれが80キロ近くまでなってくれたら、ライナーの打球が上がるようになって、飛距離も出て、県内にも九州にもいない大型内野手になれると、密かに楽しみにしているんです」

 同校のOBでもある橋口光朗監督は、今村の伸びしろに期待をかける。

 たしかに細いかもしれないが、だからこそのしなやかさもある。長い四肢がしなやかに連動して、美しいラインのフィールディングを描く。アメリカの高校生選手のような、日本ではあまり見たことのないプレースタイルが魅力の好選手だ。

【強豪大学の監督が大絶賛】

 山口のバッティングにも、しばし目を奪われる。

 軸足である左足首が回って、次に左ヒザが動いて、腰が回る。下から上に順々に巻き上がって、グリップはまだ出てこない。ステップと振り出しの間に微妙な間(ま)があって、そこからじつに滑らかなレベルスイングでボールを叩き割るような強烈なインパクトだ。

 少し前に宮崎商を訪れたある強豪大学の監督は、山口のバッティングを見て「あの子、筒香嘉智(DeNA)みたいになれるよ!」と絶賛したという。

 筒香みたいになれると言われ、今はまだ荷が重いだろうが、たしかに近い匂いはプンプンしている。均整の取れた体格に強肩。近年、こうしたタイプの高校生捕手はなかなか見かけない。

少しさかのぼれば、西武黄金時代の扇の要、伊東勤の熊本工業時代の姿が重なる。

 高校生に「いぶし銀」という表現は似つかわしくないかもしれないが、それがしっくりくる九州男児の渋いキャプテンを、今が伸び盛りの2年生たちがしっかりと支え、宮崎商は3年連続となる夏の甲子園出場を目指す。

 あっ、そうそう。2年生にはもうひとり、秘密兵器の大型サウスポーも控えているのだそうだ。

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