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朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第53回 映画に救われたジョー(そこはケチャップこぼさないんかい!)

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第12週「1963-1964」

第53回〈1月17日(月)放送 作:藤本有紀、演出:松岡一史〉

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第53回 映画に救われたジョー(そこはケチャップこぼさないんかい!)
写真提供/NHK

※本文にネタバレを含みます

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「暗闇でしか見えぬものがある。暗闇でしか聞こえぬ歌がある」

安子編から折につけ出ていた桃剣こと桃山剣之介(尾上菊之助)の映画『棗黍之丞シリーズ』がこんなにも重要な役割を果たすとは。桃剣ファンには嬉しい展開だった。

【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜53回掲載中)

関西ジャズコンテストに出ることを決意したジョー(オダギリジョー)。いつかるい(深津絵里)とアメリカに行くという夢を持ったのだ。

そんなある日、ラジオで、ジャズ業界で有名な磯村吟(声:浜村淳)がジョーのことを評価する話を聞いて、ジョーは自信を失くす。磯村自身はジョーの演奏が好きと褒めていたのだが、個人的な好き嫌いをさておき、勝つのはトミー(早乙女太一)だと予想した。トミーが太陽としたら、ジョーは月。やはり太陽の輝きが月には叶わないという論調だった。

すっかりがっかりするジョー。励まするい。映画の割引券をもらって、気分転換に映画館へ――。

ジョーとるいが観に行った映画は桃剣の黍之丞シリーズ第21作『妖術七変化 隠れ里の決闘』。条映の最高傑作との触れ込みで観に行ったものの、ラジオで磯村は「駄作」と酷評していた。「支離滅裂、荒唐無稽」と散々。ところがジョーはものすごく映画に魅入られてしまう。最初は、ホットドッグを食べながら観ていたが、徐々に食べることも忘れてしまうほどのめり込む。

「暗闇でしか見えぬものがある。暗闇でしか聞こえぬ歌がある」という黍之丞のセリフにジョーが過去の自分を重ねる。戦中、戦後、暗闇の中で必死に生きてきたジョー。彼が暗闇のなかで見つけたのが定一(世良公則)の歌った「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」だった。暗闇で生きてきたからこそ、その曲に救済を感じたのだ。

普通に考えたら「支離滅裂、荒唐無稽」な作品だとしても、映画で描かれているわけのわからない気味の悪さがジョーの心の琴線に触れたのであろう。これもひとつの「共鳴」である。おそらく、ジョーは、こういうわけのわからない、先の見えない、気味悪さに翻弄されてきたのだ。その暗闇を必死で切り裂いていく黍之丞に感化されてしまうのもわからないこともない。

また、条映の秘蔵っ子という触れ込みだった伴虚無蔵(松重豊)がただの切られ役で、この映画では適役に大抜擢されていることと、ジョーが月だけど太陽(主人公)に戦いを互角に挑んでいくことも重ねられているかもしれない。でもどちらかといえば、黍之丞自身が月的な妖しい雰囲気をまとっているから、彼に感情移入しているのかな。

映画が終わると、すっかり黍之丞気分になって「勝つよ。サッチモちゃんのために戦うよ」とコンテストに挑む気分になるジョー。そしてるいとジョーは手をつなぐ。音楽が彼を救ったのと同じく、映画も彼を救った。娯楽や芸術にはこういう役割があるのだ。不要不急なものでは決してない。

るいはこの映画には共鳴できなかった。なんだかわからないと思って観ている顔をしていた。ぽかんとなっているるいと目をらんらんとさせて観ているジョーの対比が見事。ジョーが見入っているのをるいが不思議そうに見ているのもおかしい。


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