青蔵高原(チベット高原)は「アジアの給水塔」と称され、その水循環は中緯度偏西風とインド夏季モンスーンの季節的な交代によって制御されている。インド夏季モンスーンは「アジアの給水塔」南部の年間総降水量の約70%を占めるが、近年では、偏西風が水循環の変動における重要な動力学的制御因子であることを示す研究が増えている。
第2回青蔵高原科学調査において、中国科学院青蔵高原研究所の環境変化・多圏層プロセスチームの高晶研究員と姚檀棟院士は、国内外の複数の研究機関や大学と共同で、8年間にわたる科学的研究を実施した。高標高地域での係留気球を用いた大気水蒸気の安定同位体および気象要素の3次元総合観測を32回成功させ、同位体理論モデルや同位体トレーサーを用いた大気大循環モデルのシミュレーションと組み合わせることで、偏西風が主導する冬・春季の安定した天候下における「アジアの給水塔」の水蒸気輸送を制御する「垂直コンベアベルト・メカニズム」を解明した。
研究結果によると、大気中の水蒸気安定同位体を用いることで「アジアの給水塔」の水蒸気変化の法則を解析できることが判明した。魯朗地区の水蒸気には明確な層状構造が見られ、冬・春季で顕著な差異があり、境界層、混合層、自由対流層の高さを明確に区分することが可能だ。
今回の研究は、「アジアの給水塔」の水蒸気の垂直輸送が二重の「コンベアベルト」によって駆動されていることを示している。上空の偏西風が外部からの水蒸気をもたらし、地表付近では局地的な蒸発による水蒸気が主となる。夜間に偏西風の水蒸気が沈降して局地的な水蒸気と相互作用し、層間の水蒸気の混合を抑制することで、上空の偏西風水蒸気の約30%が現地の水循環に取り込まれる。また、地表の植生もこのプロセスに影響を与える。同研究の成果は、大気モデルの改良、「アジアの給水塔」における水循環加速の気候予測の最適化、ならびに地域の氷床コアなどの同位体記録に基づく過去の気候解釈を推進するための重要な根拠となる。











