蚊取り線香、いわゆる電子蚊取り機、電撃殺虫ラケット、さらには吸引式や二酸化炭素誘引式、体温模倣誘引式の蚊取り器まで、人類は「夏になるとブーンという音と共にやってくる嫌な奴」を撃退するための発明を繰り返してきた。そして今、それらの決定版になるかもしれない「防空システム」が登場した。開発したのは中国の常州市出身の王川氏とその仲間だ。ネットを通じて「爆売れ」状態という。中国メディアの封面新聞が伝えた。

王氏は江蘇省南部の常州市溧陽の出身だ。温暖であるだけでなく、水辺に恵まれ竹林も多い。豊かな自然条件は観光業を後押ししてくれるが、蚊の大量発生も後押ししてしまう。王氏は「蚊の嫌がらせ」にうんざりしていた。アイデアがひらめいたのは2022年ごろだった。「レーザーとレーダー、さらに人工知能(AI)を組み合わせて、蚊を撃滅する超小型防空システムを作れないだろうか」と思いついた。

すばらしいアイデアに思えたが、実現するには困難が山積みだった。蚊は小さすぎ、飛ぶのが速すぎ、さらに絶対的な安全を保証しなければならない。王氏が率いるチームは約3年の時間を費やし、ミリメートル級の目標識別、マルチセンサー融合、レーザー安全制御などの技術面の一連の難題を克服した。テストのために自ら蚊を飼育し、毎月数百匹を消費した。

製品はついに定型化した。6メートルの範囲をカバーでき、蚊を識別する正確率は95%を超えた。毎秒最大で30匹前後を撃ち落とすことができる。最も重要なのは、人やペットが近づいたことを検知すると、すぐに自動でレーザーを照射しなくなることだった。

よい商品ができた。しかし市場の扉を開けることは別の話だった。最初の関門は、量産のための資金集めだった。王氏はそのために「購入型クラウドファンディング」を採用した。出資者に見返りとして、商品を引き渡す方法だ。ハードウェアの原価が高いために、商品1台を受け取れる出資額は648ドル(約10万円)とした。商品名は「フォトン・マトリックス」と決めた。

米サンフランシスコに拠点を置く世界最大規模のクラウドファンディングのプラットフォームであるインディー・ゴーゴーを通して出資の呼び掛けを始めたが、結果は思わしくなかった。1日当たりの資金調達額は、2000ドル(約32万円)程度だった。

転機が訪れたのは25年6月だった。その日、王氏は故郷の溧陽の川辺の芝生で夕方からフォトン・マトリックスを作動させて、実際に蚊を「撃墜」する様子をスマートフォンを使って撮影して、その動画をティックトックに投稿した。特に深く考えたわけではなかった。しかし最初は1万回程度だった再生回数はたちまちにして7000万回を突破した。世界中の多くのユーザーが、動画を転載した。この巨大なアクセス数がインディー・ゴーゴーに波及して、「注文数」は指数関数的に急増した。

いわゆる「バズる」現象だった。最初は王氏らが「趣味」で始めたプロジェクトだったが、事業化のめどが立った。王氏は25年9月4日、常州光之矩智能科技という会社を立ち上げた。会社はすでに23件を超える特許を申請しており、累計の研究開発投入は1200万元(約2億8000万円)を超えた。最初の4000台の製品が急ピッチで生産されており、今年の夏には世界のユーザーの手に引き渡される見込みだ。

王氏らの夢は「蚊を撃退する神ツール」の開発だけにとどまらない。次の目標はこのレーザーによる探知とAIによる識別技術を、農業での害虫駆除、倉庫の防護などより多くの分野に応用し、さらに多くの「現実の問題」を解決することだ。(翻訳・編集/如月隼人)

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