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監督の下ネタへのこだわりは相当なものでした。映画「マエストロ!」原作者・さそうあきらに聞く2

1月31日(土曜日)から全国ロードショーが始まった小林聖太郎監督『マエストロ!』。原作漫画『マエストロ』(双葉社)の作者である、さそうあきら氏にインタビューしました。
前後編に分けて、お届けします。
前編はこちら

──さそうあきら作品は今まで『神童』(双葉社)『コドモのコドモ』(双葉社)が映画化されています。今回、映画版『マエストロ!』をご覧になってどうでしたか?
さそう 僕は、基本的に映画化は、自由になさっていただければいいという考え方です。漫画と映画は全然、面白がり方がちがうと思うんですよね。原作に忠実すぎると変なものになってしまいかねない。映画になったらどういうふうに変わるのかな、っていうのが楽しみで。いつも、いい意味で裏切りを期待しています。
──私自身は、映画も原作も面白かったです。
さそう 今回の原作は、ひとりひとりにスポットをあてていく、短編連作的なスタイルだったので。(一本の映画として)筋を通すには、キャラクターをしぼりこんだりとか、色々大変だったろうなと思います。俳優さんが実際に演じられると、印象がちがう。そういう(いい意味での)裏切りが、面白いですよね。
──音を絵で描くのと、映像で伝えるのは、全然ちがいますよね。
さそう そうですね。そこがやっぱり一番ちがうところです。漫画のほうが映画よりも『すごい音』っていうのは表現しやすいと思ってたんです。読者の方がそれぞれの『すごい音』を想像していただける、という意味で。その音が実際に(映画の中で)鳴ってしまうと、どうなのか不安だったんですけど。意外と普通に、凄いって思える映画になっていると思います。
──クラシックは曲が実際はとても長いわけですが、そのへんの扱いもいいと思いました。
さそう そうですね。
──最初はプロの音楽家も混じっているのかと思いましたが、演じているのは俳優の方ばかりなんですね。
さそう 撮影現場に時々お邪魔したんですけれども。ひとりひとりの俳優に、プロの楽器トレーナーの方がついていて。ずっと画面を見ながら、チェックしてるんですよね。
──ヒロインのmiwaさんのフルートとか実際に弾けるようになったそうで、凄いですね。
さそう (主演の)松坂桃李さんも、そうとうバイオリンの練習をやられたみたいです。どの方もぜひ、(映画の撮影後も)楽器を続けていただけたらと思うんですけれども。
──さそうさんご自身が、音楽を演奏していきたい、といったお気持ちはあるんですか。
さそう まえはインドネシア音楽をやったり、ピアノをちょっと練習したりしてたんですけど。今は、そんな時間があるなら、絵を描いていたいって感じですね。でも、インドネシア音楽をやっていてよかったのは、西洋音楽と全然ちがう価値観を学べたところです。
──いわゆる「平均律」ではなかったりとか?
さそう そうですね。それは現代音楽と直接つながるところでもあると思うんですけれども。音をどういうふうに出すのかとか、それがどういうふうに聞こえるかとか、そういったことを勉強できたのはよかったし、漫画の中にもけっこう反映されているとは思いますね。
──音楽との出会いは、どういうものでした?
さそう 生で演奏を聞く機会って、最近はわりと少ないほうなんですが。高校生でクラシックを聞き始めたころは、もともと新しいものが好きだったんで。いきなり現代音楽を聞かなきゃだめだと思って(笑)。ストラスブール・パーカッション・グループっていう打楽器奏者六人のグループが、大阪のフェスティバルホールに来たのを、観に行ったんです。それは原体験に近いというか、かなりインパクト強かったですね。奏者が客席の中に入って、観客をとりかこむかたちで並んでいて。音がこう、キャッチボールみたいに、ぐるぐると回ったりとかする曲だったんですけど。

──お話を伺っていて、映画の、駅のホームで曲を演奏するシーンを連想しました。作中人物に、モデルとかっているでしょうか。
さそう どういう指揮者にしようかというのは迷いました。若い指揮者がいいのか、それとも、指揮台に立っただけで音楽が聞こえてるような老齢な指揮者にしようかと。迷っていたときちょうど、宇宿允人さんという指揮者のドキュメンタリー番組をNHKでやっていて。あのかたはプロのオーケストラで振るのではなくて、自分で楽団をつくって自分の好きな音楽をやりたい、っていう感じでやってらっしゃったんで。ああ、こういう感じがぴったりだなと思って、そこはモデルにさせていただいた部分かもしれません。
──映画版で、自分が監督ならこういうふうにはしないのにな、ということはありませんでした?
さそう いえ。とくに、ないですよ。
──私はインタビューされることも時々あって、それをライターの方にまとめていただいたとき、「あれ? 自分こんなセリフ言ったっけ?」って思うときはあるんですよ。
さそう ああ、それはありますよね。それは本当に、自分が話したとおりに(文字に)起こしてくださってるのかもしれないんですれれど。あらためて読み返すと、こんな馬鹿っぽい感じになっているのは……とか(笑)。そういうのはありますね。意図があんまり伝わってなかったな、とか。
──気をつけてまとめますが、変だったら直してくださいね。
さそう あんまり変えちゃうと、インタビューの趣旨が変わっちゃうので、そこまではしませんが。
──そういえば映画のタイトルは、原作にはない「!」が付いてるんですね。そこだけ、ちょっと、さそうさんらしくない気もしました。
さそう 映画に『マエストロ』ってタイトルの作品、けっこうあるみたいなんですよね、そういうのとの差別化の意味もあるみたいで。
──初期のオールカラー短編集も、淡い色で叙情的なのに、性の要素が強いのが特長でした。今作も指揮者が下ネタをたくさん言っていて、それは映画でも活かされていましたね。
さそう 下ネタは監督によって、さらに付け加えられてましたね。監督の下ネタへのこだわりは相当なものでした(笑)。
──乳首を連呼するシーンが印象的でした。
さそう あれは僕にはないセンスです(笑)。
──笑えるところも、せつないところも両方あって楽しい映画でした。映画を見てから久々に原作を読み返したら、漫画ならではの良さも再確認できました。この映画がヒットし、ますます新作漫画を描きやすい環境になることをお祈りしています。
さそう ありがとうございます。
(枡野浩一)

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