◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
第5週「なつよ、お兄ちゃんはどこに?」 28話(5月2日・木 放送 演出・)視聴記録
バターカリーと近藤芳正
東京に来たなつと富士子は川村屋名物バターカリーを食べる。チキンがごろっと(たぶん骨ごと)入ってる。サーブするギャルソンの野上は神経質そうな人物。
カレーを客がごはんにかける方式を「手抜きじゃございませんよ」となつたちにわざわざ説明するところや、
あくまで「カリー」という発音にこだわる野上を、当の店主の光子が「面倒くさい」と思っているところが可笑しい。スパイスの効いた近藤芳正がいれば川村屋のターンは安心だ。
この川村屋に雪月の雪之助(新商品のかき氷についてどんどん説明しちゃうところが安田顕の巧さで面白かった)が昔、修業していたという縁で北海道と東京を結ぶ。雪月のシュークリームが、川村屋のクリームパンの味と似ていると感じるなつと富士子。そのシュークリームを夕見子が珍しく泰樹に帯広に行ったお土産として買ってくる。こうして遠く離れていても北海道と東京はがっちり繋がった。
北海道編の登場人物に親しんだ視聴者に優しい配慮もあるとは思うが、そういう事情だけで構成しないで、夕見子の言動がドラマを作っていくところに作り手の矜持が見える。
高校を卒業後、北大に行こうとすると富士子はいい顔をせず、夕見子は「土地に縛るのはなつだけにして」
と言う。
この言葉が富士子を動かし、なつを東京に向かわせることになる。
もともと、夕見子は勉強が好きで牛乳も嫌いだったから酪農に興味がなく、突然現れた同世代のなつと生き方に棲み分けができていた。でもすこしだけ、なつに気を使っていたところもあるかもしれないし、なつばかり泰樹に期待されているという気持ちもあったかもしれない。
「おばさんだと思えばいいのよ」
富士子の気持ちも然り。なつが戦災孤児として家に来たとき誰よりも同情したのが富士子で、おそらく9年間、
いろんな思いでなつを育てて、いまでは本当の子供のような気持ちになっていて、なつも家に馴染んで酪農をやろうと思っていることに安堵していたところ「土地に縛る」と夕見子に突きつけられてはっとなったことだろう。なつは東京のほんとうの家族に思いを残していながら言えずにいたのではないかとか心配になったのではないか。だからふいに「おばさんだと思えばいいのよ」と言い出す。
でもそれはなつにとって悲しい言葉だった。血がつながっていたってお互いの本音はわからないし、本当の家族ではないほうがわかりあえることもある。でも血がつながってないことが何年経過したってどこかで気遣いを生むこともある。まして、ほんとうの家族と離れ離れになっている身のなつの心は簡単には表現できないだろう。
泰樹が夕見子の買ってきたシュークリームを「もったいなくて食えん」(といいながら食べる)と言うのも、
これまで夕見子が自分になついてこなかったからなつに傾倒していったのかもしれず。もちろん泰樹の頑固さが夕見子を遠ざけていたのもある。単に甘いものに弱いだけかもしれない。人間関係は些細なことが積み重なってできあがっているのだなあと思った28話。
第5週「なつよ、お兄ちゃんはどこに?」(4月29日・月〜 演出・田中正)あらすじ
ある日、東京からひとりの学生が訪ねて来た。なつ(広瀬すず)と生き別れた幼なじみ・佐々岡信哉(工藤阿須加)だった。感動の再会もつかの間、信哉から兄・咲太郎(岡田将生)が新宿で働いているらしいと知らされ、なつは動揺する。そんななつを見ていた富士子(松嶋菜々子)は、一緒に東京に行こうと提案。夏休みを使って、なつは富士子とともに9年ぶりの上京を果たす。東京の目覚ましい復興に圧倒されつつ、なつは新宿の有名店・川村屋を訪ねる。

第30回(5月4日・土 放送)あらすじ
約束の時間になっても咲太郎(岡田将生)は川村屋に現れない。心配するなつ(広瀬すず)に、光子(比嘉愛未)は、咲太郎は現れないだろうと諭す。そのとき、川村屋の扉が開く。現れたのは信哉(工藤阿須加)。心配するなつに信哉は、咲太郎が来られなかった理由を伝える。日が変わり、なつと富士子(松嶋菜々子)は、咲太郎が働いていた浅草を訪れていた。そこで咲太郎の知り合いであるダンサーから、新たな事実を告げられる…。

登場人物とキャスト 登場順
奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くし、兄と妹と別れ、剛男に連れられて北海道に引き取られてきた。生活を保障してもらう代わりに酪農の手伝いをする。父の描いた家族の絵を大切にもっている。生きるために感情を押し殺してきたが、柴田家、とりわけ泰樹と触れ合うことで、素直に感情を出せるようになっていく。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友で、戦災孤児となったなつを十勝に連れて来た。妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。1955年時点では音問別農協組合で働いている。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労してきたので、ひとに優しい。
柴田照男 清原翔(13 回から) 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。搾乳をさせてもらえない代わりに薪割りを頑張っていたが、なつが来たことを機にようやく搾乳させてもらえた。
柴田夕見子 福地桃子(13回から)幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。
柴田明美 平尾菜々花(13回から) 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者で幼いなつにも容赦なく厳しく接するが、意地悪ではなく、彼の人生哲学に基づいたもの。他人に頼らず己の力で人生を切り拓くことを心情としている。甘いものが好き。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。タップダンスが得意で、米兵にかわいがられていた。孤児院にいる。
奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。
2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じている北林は朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。貧しい開拓団の八男に生まれ、幼い頃に奉公に出され、泰樹に世話になった恩を感じて尽している。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。
4回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。
小畑雪之助 安田顕…とよの息子。菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 山田裕貴(13回から登場) 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。十勝農業高校に通っている。演劇部。
5回
山田天陽 吉沢亮 幼少期 荒井雄斗…音問別小学校でなつと同級生になる。東京からやって来た。馬が好き。農業をしながら絵を描いている。
大作 増田怜雄…音問別小学校の生徒。
実幸 鈴木翼…音問別小学校の生徒。
さち 伍藤はのん…音問別小学校の生徒。
山田正治 戸次重幸…天陽の父。東京から北海道にやって来たが土地が悪く、農業ができず、郵便局で働いている。泰樹の協力を得て、土地を蘇らせる。
8回
山田陽平 市村涼風…天陽の兄。絵がうまい。
9回
なつの父 内村光良…日本橋で料理人をしていた。絵が上手。家族のことを思いながら戦死した。
10回
花村和子 岩崎ひろみ…音問別小学校の教師。
校長先生 大塚洋…音問別小学校の校長先生。
山田タミ 小林綾子…天陽の母。
13回
居村良子 富田望生…十勝農業高校の生徒。演劇部に入り衣裳を担当する。
村松 近江谷太朗…柴田牧場と長い付き合いのあるメーカーの人物。奥様封筒をもってくる。
倉田隆一 柄本佑…十勝農業高校の国語の先生。
14回
田辺政人 宇梶剛士…音問別農協組合組合長。農協で一手に酪農事業をとりまとめ十勝を酪農王国にしたいと考えている。
19回
門倉努 板橋駿谷 …十勝農業高校の番長。クマとサケを争った逸話をもつ。演劇部に入り、村長役を略奪する。
高木勇二 重岡漠 …十勝農業高校演劇部。メガネ。門倉に役をとられてしまう。
石川和男 長友郁真…十勝農業高校演劇部。
橋上孝三 山下真人…十勝農業高校演劇部。
21回
太田繁吉 ノブ(千鳥)…十勝農業高校の教師。ヤギのチーズは牛より「クセがすごい」と言う。
27回
前島光子 比嘉愛未… 川村屋のマダム
野上健也 近藤芳正… 川村屋のギャルソン
茂木一貞 リリー・フランキー… 角筈屋社長
煙カスミ 戸田恵子… 歌手。ムーラン・ルージュにいた。
三橋佐知子 水谷果穂…川村屋の店員
土間レミ子 藤本沙紀…カスミのいるクラブの店員
28回
島貫健太 岩谷健司
ローズマリー エリザベス・マリー
脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美 舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション
制作統括:磯智明 福岡利武
(木俣冬)