第4週「始末屋のごりょんさん」第19回 10月23日(月)放送より。
脚本:吉田智子 演出: 東山充裕

19話はこんな話
「一生一緒にわろてんか」という求婚の言葉で、藤吉(松坂桃李)につれられて大阪船場にやってきた、てん(葵わかな)。待ち受けていたのは、こわいお姑・啄子(鈴木京香)と、藤吉の許婚の楓(岡本玲)。
てんは、女中として扱われることになり、女中部屋をあてがわれる。
朝ドラな人々
「君の名は」(91年)の鈴木京香、「純と愛」(12年)の岡本玲と、わりとマイナス面が語られがちな作品に出演していた俳優がそろって出てくることで漂う、そこはかとない不吉感を、これからてんが被るであろう大変さの予感と重ね合わせる、みごとな企画である(勝手にそう思っただけです、そして冗談です、念のため)。
ただ、女中役で楠見薫(「あさが来た」〈15年〉の「ほんにほんに」が口癖の女中他、大阪制作の朝ドラ常連)が出演していることに期待したい。
そして、松坂桃李がヒロインの相手役で出演していた「梅ちゃん先生」(13年)は高視聴率作品であることも念のため記しておきたい。
鈴木京香はガブ系か
藤吉(藤吉郎)の名前は太閤秀吉からとったと啄子が言うので、鈴木京香のキャスティングが腑に落ちた。
18話のレビューでも書いたが、鈴木は、大河ドラマ「真田丸」では寧、映画「清須会議」では市と、秀吉の正妻と、側室茶々の母と秀吉に関係ある役を演じてきた。だからか、なんだかしっくりくるのだ。
そんな京香さまを、藤吉は、美しい顔がおそろしい形相に豹変するギャップをもった人物として、文楽人形の「ガブ」に例える。おそろしい形相の顔ぽいメイクになっているし、京香さま自身、そういうふうに顔筋を動かしている努力が垣間見える気がする。
ただ、京香さまはガブのように瞬時に変わるというより、能面のように、ひとつの顔のなかに多様な感情が混ざってじわじわくる演技のひとだ。まさに市がそういう感じだった。
ガブ系豹変演技は、
「ひよっこ」レビューで書いたが菅野美穂がうまい。
今回、京香さまが、新たなガブ芸に挑まれることも楽しみである。
ちなみに、昭和生まれのテレビ好きは、NHKの人形劇「新八犬伝」(73〜75年)の玉梓(が怨霊)でガブに出会い魅入られたというひとは多いと思う。
NHKの作品は、なにかと、子供に記憶を残すので、しっかり作り続けてほしい。
これはファンタジー
北村家の家訓は「始末、才覚、算用」。
啄子が、てんを面接して、彼女の特徴を書き出したのが「京都なまり、ぜいたく、アホ」
ここが
今日の、わろ点
年齢と好きな食べ物と好きなことを聞いて答えた言葉で「京都なまり、ぜいたく、アホ」とざっくり判断。
啄子さま、なかなか厳しいおひとである。
もっとも、贅沢に育てられ、笑ってばかりなんていうまだ幼い少女は、商家の嫁にはちょっと・・・であろう。
とはいえ、女中と言われても、にっこり笑って受けて立つてんは可能性を秘めている。これからどう成長していくか期待したい。
京都のお嬢様が浪速のちゃきちゃき商人の嫁に変身するなんて話はファンタジーだと思って観れば良い。
タイトルバックも縁起物の富貴寄みたいで、じつにファンタジックだ。
(木俣冬)