マウンドに上がった製造部の若手・沖原和也(工藤阿須加)。
大きく振りかぶって、投げた。

直球ど真ん中、ドカーン! 球速153km。

対戦相手の青島製作所野球部はポカーン。
観客席もあっけにとられて、言葉も出ない。
Twitterのタイムラインは大喝采。
「マンガか!」
「やっぱり似てる」
「父ちゃんより早いって!」
と、大盛り上がりである。

危機的状況に陥った中小精密機器メーカー・青島製作所と同社の野球部それぞれの逆転劇を描くドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS系・日曜21時)が4月27日からはじまった。
(原作は池井戸潤の同名小説。原作おさらいレビューはこちら)

第一話のラストで豪腕ぶりを見せつけた沖原和也を演じる工藤阿須加は、元・西武ライオンズの名投手として知られる工藤公康の長男。インタビューの中で、父・公康はこう語っていた。

<<留学から戻ると、今度はかつて「8時半の男」といわれた故宮田征典コーチが「速い球には投げ方があるんだ」と猛特訓してくれた。球速が10キロアップ、146キロの速さで投げられるようになった。>>(「負けず嫌いが現役の力」/朝日新聞×マイナビ転職 Heroes File

息子・阿須加は意外にも野球経験はないという。
大学に通うかたわら、2012年にドラマ「理想の息子」でデビュー。翌年、大河ドラマ「八重の桜」、主人公の弟・山本三郎役に抜擢される。そして、「ショムニ2013」では、江角マキコ率いるショムニメンバーがメロメロになるシロクマ急便の配達員・速見を好演。

高身長で筋肉質、白い歯がキラーンのさわやか青年。ショムニのみなさんが押し合いへしあい、こぞって受け取りにサインをしたがった彼ですよ、彼。あのうるわしの筋肉が再び見参。

「ルーズヴェルト・ゲーム」での初登場シーンも凝っている。
先輩社員に食事に誘われるも、「急ぎの出荷があるんで」と断る沖原。
原作ではちょっとすねた感じのあるキャラでしたが、阿須加くん演じる沖原はマジメで素直そう。
ちょっとおどおどした顔で、誘いを断った後、荷物のあげおろしに励む

このときのカメラワークが素晴らしい。
汗ばんだ上腕二頭筋にぐぐぐーっと寄っていったかと思うと、
続いて、ふとももからお尻にかけてをぐぐぐーっと。
「半沢」チームがアップにするのは顔だけじゃなかったのである。


同僚の山崎美里(広瀬アリス)に野球観戦に誘われ、
「悪い、いいわ……野球とか興味ないから」とすげなく断るも、
美里が投げ損ねたみかんは、横っ飛びでキャッチ。
なんでしょうか、この少女マンガ展開。
胸キュン要素も随所にちりばめられている。

そして、いよいよ運命の日。
沖原は先輩社員に頼み込まれ、青島製作所野球部と製造部チームの試合にでることに。
顔をこわばらせて拒否していた野球なのに、球場に来ると大はしゃぎ。
野球部の好プレーに手を叩いて喜び、
「お前、どっちを応援してんだよ」
と突っ込まれたりもする。か、可愛いすぎる。

観客席には、青島製作所会長にして、野球部創設者でもある青島毅((山崎努)と社長秘書・仲本有紗(壇れい)、総務部長兼野球部長・三上文夫(石丸幹二)もいる。そこへ、メインバンクである白水銀行の融資課長との“顔相撲“を終えた、社長・細川充(唐沢寿明)が合流する。

今回のドラマでは、海外の映画やドラマでよく見かける「カットバック」(二つの場面を交互につないで切り返す)という技法が使われていて、青島製作所本体と野球部、それぞれの物語が同時並行で進む。
沖原と美里が甘ずっぱいやりとりをしている間も、唐沢寿明や江口洋介をはじめとする、ネクタイ組は
陰謀うずまくビジネスの世界で闘っている。

スーツ組とユニフォーム組の日常は、まるで別世界だが、時々クロスする。

「半沢直樹」では、陰謀を解き明かす過程もこってり描かれていた。
でも、本ドラマでは比較的あっさり。ただし、顔芸は相変わらずの濃さをキープ。
そう考えると、天下一品で言うところの「こっさり」ぐらいか。
一方、野球編はディテールへのこだわりと同時に、野球にさほど興味がない人への気配りも感じる。素人目にも動きにキレがあり、飽きさせない。

予告編によると、次回は沖原のワケアリ感の謎が解き明かされる模様!
筋肉と涙目に注目です。
(島影真奈美)

第二話へ
編集部おすすめ